多文化共生教育の最前線 [横浜市立飯田北いちょう小学校の実践から](5)新たな課題解決に向けて

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現在、本校に在籍している児童のうち、約54%にあたる149人の児童が、外国に関係のある児童だ。昭和50年のベトナム戦争終結後、日本では54年から難民を受け入れ、各地に難民定住センターを開設した。

同年に、隣接する大和市に大和定住促進センターが開設し、平成10年に閉所するまでの約18年の間に、約2600人の難民を受け入れた。一定期間の日本語教育や生活支援を受けた難民の方々の多くは、県営上飯田いちょう団地に住み、その2世・3世の世代が、現在、本校に通っている。

日本語だけでなく、母語教育も課題
日本語だけでなく、母語教育も課題

保護者は、時間をかけて日本語を学ぶ時間が少なく、次第に子供の話す日本語についていけなくなり、親と子の間で、細やかなニュアンスや感情を言葉で伝え合うことができなくなっているという、新たな課題がみられるようになった。

今年度の調査によると、外国に関係のある児童のうち、家庭の会話として用いられる言語が、日本語だけという児童は36人(約24%)、母語だけという児童が42人(約28%)、母語と日本語の「ダブル」が70人(約47%)、両親の国籍が違う場合のような「トリプル」が1人(約1%)であった。

親子間での会話では、子供は親が分かる易しい日本語に、知っている母語を混ぜて、親は子供が分かる易しい母語に、知っている日本語を混ぜて話している場面を見かける。「本当に通じ合っているのだろうか」と少し心配になってしまう。

異国で学ぶ、共通語を母語としない子供たちへの母語保障の取り組みについては、アメリカやカナダなどで先進的に取り組まれてきた。

しかし、日本においては、学校教育の中で行われている例はあまり聞かない。一般的に、言語はアイデンティティの形成と密接に関わっていると言われ、子供が自分の「言語」が確立できない状態になれば、その後のアイデンティティも不安定になるという報告もされている。

本校では、統合前の平成25年度から外国語補助指導員が配置された。これをきっかけにベトナム語の通訳が常駐できるようになり、ベトナムの子供たちに対するベトナム語保持教室を開設した。来日したばかりの児童に対しては、算数科や社会科を中心に母語通訳者に入ってもらい、母国語による学習支援を行っている。

いずれにせよ、現在の教育課程の中で母語教育を行うのは難しい。日本語を獲得すればするほど母語を忘れ、アイデンティティが薄れていく現状に対して、どう対応していくかが課題となっている。

(国際教室担当教諭 菊池聡)

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