みんなで「教える難しさ」に立ち向かう―22年の事実と実例に基づいて―(7) 学習の目的とは

eye-catch_1024-768_kouno学習教室「エルベテーク」代表 河野 俊一

教育の専門家の中には「文字の筆順やトメ、ハネ、ハライはあまり気にしなくていい。無理に教えると子供が萎縮してしまう」と言う方がいます。文字は読めればいい、書ければいいという意味合いからの発言だと思われます。

子供の初期指導において「筆順を気にせず好きに書いていいよ」と教えたら、どうなるでしょうか? 子供たちも指導する側も混乱するのは目に見えています。子供たちへの大切な教えが抜けてしまいます。筆順や字形の正確さを求める(守らせる)目的は、書字の中にある手順やルールを学ぶことです。計算も、数の意味を理解・記憶し、各種のルール・手順に即して論理的に考える学習です。

たとえ、大人にはささいな手順やルールのように見えても、子供にとっては正しいことを覚えるという、身に付けるべき学ぶための姿勢だと言えます。物事には手順やルールがあることを知り、それに従って考えをまとめ形を再現する、それは「教わる力」の第一歩のはずです。

ノートのとり方(国語)
ノートのとり方(国語)

事実、筆順を無視して好きなように書いている子は、マス目やけい線からはみ出た乱雑な文字になっていたり、周りに目を向けられず自分本位で注意や指示の受け入れが苦手なケースが多いようです。私たちの教室ではそんな場合には、書き方や読み方から立て直します。もう一度、正確な筆順・形・大きさ、相手が分かる発音(声量やスピードなども)を求めるのです。

そのような指導は間違いなく、学習面以外の生活面でも良い効果を生みます。教科書の全ページに落書きをしていた当時小学校低学年の男の子(現在、小学5年生)は言葉の遅れやかんしゃく・大泣きがありましたが教室と家庭で学習を積み重ねるにつれ、いまでは落書きをせず、模範的なノートの取り方をするようになりました。

授業中に思いついたことを大きな声で繰り返し言う言動も改まり、授業終了後の片付けをはじめ、大きく変わりました。読み書き計算を通して身に付けた手順やルールを守る姿勢が、自分本位の考えと感情・行動をコントロールする力につながっているからです。

そう捉えると、「文字の筆順、トメ、ハネ、ハライなどは気にしなくていい」という指摘がいかに的外れか分かります。椅子に座る姿勢、話を聞く姿勢、鉛筆を持つ姿勢から始まって、筆順・形・大きさの正確さという基本をおろそかにしない初期指導こそが子供の教育にはふさわしいと言えます。子供に迷いを生じさせないように基本を教えることが大事です。