多文化共生教育の最前線 [横浜市立飯田北いちょう小学校の実践から](9)アメリカの教育から学ぶ②

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これまで、アメリカにおいて「継承語話者」は、学業不振や退学率の多さなどで常に問題視され、「社会のお荷物」という見方がなされてきた。継承語話者が「国の資源」とみられるようになったのは、2001年の同時多発テロ以降のことといわれている。08年に、当時のブッシュ大統領が「No Child Left Behind」、すなわち「英語ができない子も、特別支援を要する子も、分けることなく学習する」という教育政策を打ち出した。

一般的に継承語学習者は、比較的少ない学習時間で、高度な言語力を習得することが可能だといわれており、政治や経済がグローバル化するアメリカにおいて関心がより高まってきたといえる。

いちょう小での本校でのイマージョン教育の取り組み
いちょう小での本校でのイマージョン教育の取り組み

一方日本では、全ての学習を日本語で学習しているのが現状である。その原因としては、(1)高校受験のための日本語力と学力の習得に限界がある(2)日本語でも母語でも理解できるバイリンガルの育成は困難(3)高校、大学以降の社会構造が「多文化化」されていない――などが考えられている。

本校には、約150人の外国に関係のある児童が在籍しているが、その9割は日本で生まれたか、乳幼児期に来日している。日本での生活が長く、日常会話で困ることは少ないが、一般的に学習言語能力が不十分で、学力への影響が生じている。年齢が高くなるにつれて母語力が落ちる傾向もみられ、言語を介しての親子間コミュニケーションが薄れるばかりか、アイデンティティーそのものが不安定になる傾向もみられる。

一方、母国で教育を受けた後、就学途中から来日した残り1割の子供たちは、母語による読み・書きを保持してはいるが、一般的に日本語を獲得するまでは、日本語による学習は理解できないばかりか、一定期間、一部の教科学習には参加せずに日本語を学習しているのが現状だ。本校では、母語学習の提供や教科学習の達成を目指した母語によるイマージョン学習など、試験的に継続して取り組んではいるが、学校教育全体での共有は進んでいない。

年々増加傾向にある在日外国人の数から考えると、母語を活用した学習のプログラム化が望まれる。特に、来日直後に、日本語で学習することが困難な児童には、教科学習の達成のために母語イマージョン学習が必要である。

つまり、アメリカが行ってきた教育政策のように、一人一人の特徴や多様性を「国の資源」として肯定的に受け入れるとともに、継承語教育に力を入れていく必要があると考えている。

(教諭 菊池聡)

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