現代リベラルアーツ教育論~熱き心とクールな頭脳を育てる(1) 教育で人類の究極目標を実現

eye-catch_1024-768_takeuchi_fin山梨学院大学国際リベラルアーツ学部 学部長補佐/認定NPO法人 Teach for Japanアドバイザー
武内隆明

「リベラルアーツ」という言葉は、日本でも最近よく耳にするようになった。少し前にはやった「教養学部」のような内容と理解されている方々も多いが、実際は似て非なりである。実は、理念的な源流は、ギリシャ・ローマ時代にあって、17世紀の英国を経て米国が継承した。その米国でも改めて、意義と重要性を再確認してきているところだ。

本連載では、米国のリベラルアーツの中心地的存在である、米国東部での私の原体験と、今後の社会状況予測とを織り交ぜながら、将来の教育論のあるべき姿の一つを、(微力ながら参考になるやも知れぬという思いで)提言させていただきたいと思う。

全9回にわたるこの連載では、今後の教育がどうあるべきか、教育界の新参者の視点から述べさせていただきたい。人生の半分を海外で、キャリアのほとんどを金融関係で過ごした、教育界のアウトサイダーの考えとして、少しでも参考にしていただければ幸甚である。

◇ ◇ ◇

私は1980年、都内の私立暁星高校を卒業後、米マサチューセッツ州のWilliams Collegeに進学した。同学は、USニューズ誌の大学ランキング・リベラルアーツカレッジ部門で、過去15年にわたって全米1位に輝いている名門カレッジだ。おそらく225年の校史の中でも、日本人としてはパイオニア的存在だったと思う。そこで経済学と心理学を専攻し、3年半で卒業した。

卒業後は、野村證券で日本企業の基礎をたたきこまれ、その直後からは生き馬の目を抜く外資系金融会社の要職も歴任した(初めて日本人としてヘッドハントされた、ボストンの名門投資顧問会社ウェリントン・マネジメントや、米国最強の投資銀行といわれているゴールドマン・サックスのアセット・マネジメント部門、欧州最大の銀行の一つであるスイスのUBSなど)。

最後は、プルデンシャル・ファイナンシャル・アドバイザーズ証券の社長を務めた。上司や同僚、株主を満足させるのが最優先事項だったが、やはり何よりも、顧客から得られる、直接の喜びの言葉が非常にうれしく、一層、仕事へのやる気が増したものだった。しかし、年月とともに増加する収入とは反比例して、何かやりがいというか、生きがいが不明瞭になってきてしまった。

これは年のせいでもあるだろう。だが、それだけではない。思うに、現在自分が置かれている世界・社会状況、そして何よりも、20歳前後に受けたリベラルアーツ教育が、ワインの醸成のように、ジワジワと効用を発揮してきたのだ。そして私は、教育の世界へと転身した。特定NPO「Teach For Japan」を経て、現在に至っている。

いま、還暦が秒読み段階に入りつつある年齢に当たり、初めて、余生におけるヴィジョン、ミッション、バリューが明確になってきた。

▽「ヴィジョン」:戦争がない地球をつくるべく貢献する▽「バリュー」:戦争への道をソフト(教育)分野からブロックする▽「ミッション」:世界中の若者にリベラルアーツ的(多文化を受け入れ、多視点を持つ)クールな頭と熱き心を育む――。

戦争回避という人類の究極目標を実現するのが、私の教育目標なのである。


〈プロフィル〉

1980年代に米国留学を経てから、25年以上、日欧米の大手金融機関の資産運用関連業界で活躍。06年、上海で、経営コンサルタント会社を起業。12年に帰国し、翌年からTeach For Japanのサポートを開始し、15年1月から現職を兼務。