現代リベラルアーツ教育論~熱き心とクールな頭脳を育てる(3)NatureかNurtureか

eye-catch_1024-768_takeuchi_fin山梨学院大学国際リベラルアーツ学部 学部長補佐/認定NPO法人 Teach for Japanアドバイザー
武内隆明

改めて、どのような原体験や教育が人間の根源を変えるのか検証してみたい。

米国留学中の心理学の授業で、人格形成は、“Nature or Nurture(性質か育成か)”の、どちらによるか討論する機会があった。結論は、「両方とも重要である」。自分の体験からも、この答えには納得する。

しかし、生まれたときからかなりの適性や成功路線はすでに決定しているという「Nature説」が有力視される傾向は、最近の研究によってますます強まっているようだ。中国では有能なオリンピック選手を擁立するため、ごく幼い段階から将来有望な子供を選抜し、集中的に強化する手法が取られている。米国のセレブの間では、DNA鑑定で発がん確率を測り、リスクの高い部位をあらかじめ切除する健康法が話題になった。

このようなケースは日本でも見られる。就職活動中の学生の潜在的な傾向をAI分析で「見える化」するアプリ「GROW」が、IGSの福原正大社長によって開発され、大手企業やマスコミから熱い視線を浴びている。

背景には、面接官との個人的な相性や「勘」に100%委ねる採用形態への危惧がある。これはちょうど、医師が培った「長年の勘」による触診と、最先端の医療機器で得たデータを併用する方が、リスクが分散されて安全性が高まるのと相似している。

ごく最近では、婚活市場でもアドバイザーとの面談から得た情報に、アンケート方式などによる性格判断のような、多数の人々のデータを参考にするのが一般的になっているようだ。そもそも中国古来の四柱推命も、生年月日などの膨大な過去のデータ(今風に言うと「ビッグデータ」)に基づいたマッチング予測とも言えるのではないだろうか。

しかし、Natureが100%では、教育の存在意義がなくなってしまいかねない。

確かに、明らかに営業職に向いていない学生を営業部に配置するのは、学生本人にとって非常な苦痛だし、企業にとってもマイナスかもしれない。それでも、「いやぁ~、入社早々営業なんかに配置されて、毎日退社する事ばかり考えてたけど、営業職の経験があったからこそ心がタフになって、顧客の生の声の重要さが身に染みて分かって、今は営業も含めた全体的な経営ができてるんだよ」という場合もあるにはある。これはNurture説の有力性を示す例だろう。

教育の重大な役割は、生まれ持った才能や個性のみに束縛されず、一人一人が社会に自分の役割を見出し、充足して幸せに生きていけるよう導くことにある。

あなたへのお薦め

 
特集