現代リベラルアーツ教育論~熱き心とクールな頭脳を育てる(6)山梨学院大学のiCLA

eye-catch_1024-768_takeuchi_fin山梨学院大学国際リベラルアーツ学部 学部長補佐/認定NPO法人 Teach for Japanアドバイザー
武内隆明

ここまでの連載で、リベラルアーツ教育のキーワードをいくつも書いた。▽「クール」な頭と「熱き」心▽生きがい▽習慣化▽社会的インパクト(自分の社会的役割)▽分散▽バランス性▽新しい視点――、これらを一つにまとめてみよう。

すなわち、リベラルアーツ教育の目指すべきところとは、「多様性を認めて分散された多面的で新しい視点からものごとを見つめ、クールな頭と熱き心のバランスを取りながら、常に問い続ける事を習慣付けること。そしてあらゆる状況においても、直接的または間接的に戦争のない社会を実現するため、少しでも社会に良いインパクトを率先して与え、それを生きがいとするような人材を育てることにある」となる。

そしてこれを実現しようとしているのが、2015年に創設されたばかりの、山梨学院大学のInternational College of Liberal Arts(iCLA)だ。ほとんどの講義を英語で実施することで、世界各国の学生に門戸を開いているのに加え、教員もハーバード、スタンフォード、ケンブリッジなど、世界屈指の名門大学を卒業した優秀な外国人がそろう。日本にいながら、まるで海外留学しているような「多様性」を身をもって体験できる、極めて恵まれた環境だ。

また、一学年の学生数がわずか80人で、その半分が外国人。教員1人当たりの生徒数は平均13人以下と、極めて少人数制の授業。そこで与えられたものを吸収するだけではなく、インターアクティブな学生たちが、より一層、教授や学問との関わり合いに拍車を掛け、もはや、その「濃さ」は日本の他大学の追随を許さない。ここでの友達は、一生涯の宝となるだろう。

また、その中核をなすのは、職業的訓練的な特定の専攻分野にとらわれず、バランスよくさまざまな分野を横断し、物事の本質を見据えて世の中をリードしてゆく資質を習得することである。

カリキュラムは、欧米的な厳しく幅広いものだが、その中には、多数のワークショップを通じて、日本の文化・伝統にも広く深く接する機会が多く組み込まれている。なので在学中に、じっくりと自分のやりたい事を探し出し、自分しかできない将来の可能性・才能をとことん見つけ出すことを良しとしている。

入学1年目の学生は全員、山梨のキャンパスで外国人留学生と共に入寮し、3年次必須の海外留学と合わせて最低2年間の寮生活を義務付けられているのも大きな特徴だ。外国人教員や留学生に起床から就寝まで囲まれる生活を経て、グローバルで活躍できる人材に育つ自信を深めている。

「昭和初期までの日本人は、骨太であった。海外に行っても、欧米人の偉い人とも堂々とわたり合えた」と言われるが、それには全寮制の旧制高校教育の影響もあったのではないだろうか。

実は、米国のリベラルアーツカレッジも、その別称はレジデンシャル(全寮制)・カレッジと呼ばれ、研究と大学院教育に重点を置き、通学が主の、別称リサーチ・ユニバーシティと呼ばれる総合大学とは、あえて一線を画している。旧制高校や米国のリベラルアーツカレッジの卒業生に共通していると思われる。

約3~4年間、まだ二十歳前の年齢のころから、レベルの高いさまざまな学生との全寮制生活を送って得た習慣からは、間違いなく、リベラルアーツの大きな効用として、「ワインの醸成のようにジワジワと効果を発揮」されてくる。次回は、私の経験した具体例を述べる。