学びから創るコミュニティ (7)貨幣資産と信頼資産

eye-catch_1024-768_yamazakiコミュニティデザイナー 山崎 亮

各地でコミュニティデザインに携わっていると、生活に必要なものを貨幣ではなく信頼で手に入れている人を見かける。食べ物も服も家も誰かが与えてくれるのである。その人はただ受け取るだけではない。地域に困っている人がいれば、できる範囲で手助けをし、その時間をいとわない。多くのものが手に入れば世話になっている人へ届ける。地域の人たちとの間に信頼感が存在する。貨幣を手に入れるための時間と、信頼を手に入れるための時間のバランスがいい。そんな人に出会うのはおおむね中山間地や離島である。

日本初となるコミュニティデザイン学科は東北芸術工科大学に設立された。ここでの教育プログラムは、貨幣資産と信頼資産をバランス良く高める生き方に寄与するようにつくられている。学生は座学だけでなく、実際に地域へ出向き、住民と共にワークショップを繰り返し、コミュニティデザイナーとしての技術を実践的に高めている。
日本初となるコミュニティデザイン学科は東北芸術工科大学に設立された。ここでの教育プログラムは、貨幣資産と信頼資産をバランス良く高める生き方に寄与するようにつくられている。学生は座学だけでなく、実際に地域へ出向き、住民と共にワークショップを繰り返し、コミュニティデザイナーとしての技術を実践的に高めている。

都市部でこうした生活をしている人に出会う機会はほとんどない。何を手に入れるにも貨幣が必要だと信じて疑わない生活をしている人が大多数だ。貨幣が手に入らなくなったら家賃も食費も払えなくなる。だから働き続けなければならない。少しでも貨幣を多く手に入れて安心したい。「信頼が大切なのはわかるけど、今はそれどころじゃない」。そんな具合だ。必死な状態になると、「信頼を構築している暇はない、そんな時間があるなら働いて貨幣を手に入れなければ」ということになる。

老後に安心して生活するために、どれほどの貨幣を貯めておけばいいのか。仮に十分な貨幣を貯められたとしても、貨幣価値が暴落しないかどうか心配だ。専門家は「資産のポートフォリオを分散型にしておきなさい」とアドバイスする。現金を貯金するだけでなく、証券や不動産などにも変えておきなさいという。それでも証券や不動産の暴落を心配することになる。

もし分散するのなら、貨幣資産の内訳だけでなく、信頼資産も増やした方がいい。貨幣資産を増やすために時間を使うばかりでなく、信頼資産を増やすための時間も生活の中に取り込む。地域の人たちと交流し、顔見知りの人を増やしていく。「いざというときには自分も相手を助けるし、相手も自分を助けてくれる」と思える人の数を増やしていく。それが老後の安心感につながっていくことだろう。

戦後は都市居住人口の比率が高まり、見知らぬ人と貨幣を使ってやり取りすることが増えた。こうした変化に呼応するように、貨幣資産を増やすための教育が重視されるようになった。これからも不確実な時代が続く。都市部であっても貨幣資産と信頼資産の双方を増やしながら、地域と共に安心して生きていけた方がいい。そのためには、人の気持ちに共感する力、人の悩みに気付く力、人に甘える力などを高める。いずれも偏差値で示すのは難しい力だ。

(おわり)

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