未来カルテで見つめる2040年の日本(1)「未来カルテ」とは

eye-catch_1024-768_kurasaka_fin千葉大学教授 倉阪 秀史

日本は2008年をピークに人口が減少している。1人の女性が生涯で産む子供の数を示す合計特殊出生率は、2・07にならないと人口が安定しないとされているが、厚労省の「人口動態統計(確定数)の概況」によれば、16年の合計特殊出生率は1・44だった。05年の1・26よりも持ち直しているものの、前年の1・45よりも低下している。政府は14年に策定した「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」で、20年までに合計特殊出生率を1・6にするという目標を掲げているものの、この達成は危うい状況である。

未来カルテのイメージ
未来カルテのイメージ

人口減少は、高齢化と共に進行するため、働ける人の数は総人口よりもさらに早く減少していく。このため、経済活動を支える人手が不足していく。私たちの経済活動は、人的資本基盤(人そのもの)、人工資本基盤(建造物・建築物・耐久財など)、自然資本基盤(農地・林地・漁場など)、社会関係資本基盤(人と人との支え合い)といったさまざまな資本基盤に支えられている。人手不足は、特に資本基盤のメンテナンスを行う産業分野に現れる。

例えば、保育・教育・医療・介護(人的資本基盤)、建設・建築(人工資本基盤)、農林水産・再生可能エネルギー(自然資本基盤)、各種公務・NPO(社会関係資本基盤)といった分野である。これらの産業分野では、それぞれの資本基盤の状態に応じた「手入れ労働」を提供しなければならないため、一定の技能が求められているが、大量生産などができず、大きな利潤を上げることができないという特徴がある。このため「きついがもうからない」分野となり、十分に人が集まらないことになる。

「未来カルテ」は、人口減少のインパクトを市町村単位で可視化しようとする取り組みである。未来カルテには、現在の傾向が継続した場合、その市町村の産業構造や、保育、教育、医療、介護の状況、公共施設・道路、農地の維持管理可能性、財政収支の見込みなどがどのように推移するかについて、各種統計データを用いて、5年ごとにシミュレーションした結果などが掲載される。17年10月末にはウェブサイトで未来カルテ発行プログラムを無料でダウンロードできるようにした。指示に従って市町村コードを入力すれば、誰でも指定した市町村の未来カルテを入手できるようになっている。

本連載は、未来を担う子供たちが人口減少という課題を受け止め、解決に向けて意識や行動を変容するツールとして、この未来カルテを教育現場でどのように活用できるかに焦点を当てる。