小学校「外国語」の課題を考える(1)中学入試で英語の文法問題

eye-catch_1024-768_watanabe_fin国立教育政策研究所名誉所員 渡邉 寛治

先ごろ、朝日新聞において「英語入試 私立中『先取り』」というニュースが報道された(2018年1月19日)。それによると18年現在、首都圏および近畿圏において、137の私立中が英語の入試を行ったとのこと。某中学校では文法問題を出題した。

【一例】If you want this pen, I’ll give(     ).

【選択肢】you it / it you / it to you / you to it

上の問題を解くには英検2級レベルの文法知識が必要である。このような問題を出題する学校では、中学校教育で生徒にどのような資質・能力を育みたいのか。小中の義務教育は「全人教育」である。事例の問題は文法力がないと解けないが、11年度から施行している小学校「外国語活動」では文法学習は行っていない。「学校は、人を育むところ」である。中学入試で小学生に外国語の文法知識を問う入試の理念には賛同できない。

仮に中学入試で英語の試験を行う場合、英語によるコミュニケーション力(資質・能力)に関する口頭試験であれば多少理解できる。小学校では、英語によるコミュニケーション力(相互に分かち合う力)の素地の育成を行っているからである。ALT(外国語指導助手)を導入しコミュニケーション教育を実践する学校では、児童の主体性(自分で思考・判断・行動すること)を重視したカリキュラムを編成し、異文化コミュニケーションを楽しめるような教育を行ってきた。その結果、児童が「自己開示・自己発揮」する姿がみられるようになった。

自分の気持ちや考えなどを伝え合う資質・能力は、国際コミュニケーションの場では必須である。小学校では「外国語活動」を通じてそのコミュニケーション力の素地を育んでいる。まず、児童は自分の気持ちや考えを持つようになる。次に臆することなくALTとコミュニケーションを図ろうとし、そのコミュニケーションを楽しむようになる。対話を重ねて外国語(英語)に慣れ親しみ、文法の知識がなくても対話を楽しむようになる。

「果物店での買い物」は児童が大好きなコミュニケーション活動だ。店員とのやりとりで、英語が苦手な児童もALTや友達とのコミュニケーションを楽しめる。コミュニケーション活動を通じ自己決定力(思考・判断・表現の能力)およびコミュニケーションを図ろうとする態度が育つ。2年後(70時間の学習後)には、誰とでも「積極的にコミュニケーションを図ろうとする資質の素地」が育まれる。これは現行の学習指導要領が求めてきた重点事項である。ただ、教育現場では課題も多い。