未来カルテで見つめる2040年の日本(3)視野が広がり、考えが深まる ~仙台の実験WSから~

eye-catch_1024-768_kurasaka_fin千葉大学教授 倉阪 秀史

未来カルテは、国立社会保障・人口問題研究所の将来人口予測・年齢構造予測を前提として、現状の各種比率などを固定して、2040年の就業構造や、保育、教育、医療、介護などの需要と供給のギャップなどを予測するものである。

全市町村の未来カルテを無料で発行できるようにしているが、この未来カルテを公共的市民の育成のために活用できないかと考えた。例えば、地域の中高生に未来カルテの内容を伝え、地域の将来の課題に触れる機会を持つことが、地域の持続可能性を支える人材育成につながるのではないだろうか。

未来カルテ3未来カルテの情報による公共的市民の育成効果を確認するために、17年7月に、私が担当している東北大学大学院環境学研究科の集中講義で、実験的にワークショップを実施した。実験ワークショップでは、受講生41人に参加してもらい、7班に分かれて、仙台市の未来カルテを説明する前と後の2回に分けて、市長に提言したいことを書き出してもらった。

未来カルテの講義前の政策提言は合計で177件出された。177件の提言を項目別にみると、現在の学生自身の生活領域の利便性向上に主な関心が置かれている傾向が分かった。特に、「地下鉄の運賃を学生は半額にしてほしい」「路上駐車を厳しく取り締まってほしい」といった、交通関係の提言が約半数を占めていた。参加者には、燃料電池など、環境関係の研究に取り組んでいる大学院生も多く参加していたが、その内容は政策提言に反映されていなかった。

一方、未来カルテの講義後の政策提言は257件に上り、提言件数が1・45倍に増えた。政策提言の時間的視野、空間的視野が広がった。高齢者が住みやすい社会のための取り組みや、農業などの後継者不足解消の政策などさまざまな世代や産業のことを考えたものに進化していた。

学生自らの研究分野(エネルギー)にも絡めた提言が行われた。高齢者増加を踏まえた交通整備を求めたり、若者に仙台の魅力を伝えて人口流出を防いだり、交通問題や若者に関する提言がみられ、公共性を帯びたものになった。学校を介護施設に転用するアイデアなど、分野間をまたがる提言もあった。

未来カルテによって「もしも今までの傾向が2040年まで続くとした場合に何が起こるか」というデータに触れた人が、何らかの政策の必要性に気付くことを期待している。その効果が、実験ワークショップを通じて確認されたと考えている。

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