まなびじま奥尻 ―離島の町立高校の挑戦―(3)島留学実現のため、解決すべき8つの課題

eye-catch_1024-768_tawaraya_fin北海道奥尻高校校長 俵谷俊彦

島外からの生徒募集というのは、町立移管前の2016年度には炉辺談話のアイデアとしてあったが、奥尻町や町教委としての具体的なビジョンには至ってなかった。島留学には厚い壁が立ちはだかっていた。島内には下宿先もなければ寮もない。島外から来る生徒への金銭的な補助など、あるわけがなかった。

全国募集をするには、遅くとも8月には広報をしなくてはならない。前例のない奥尻高校への島留学など、誰も見向きもしないのは明らかだった。全国募集の時期を9月と仮設定し、逆算して奥尻町教委や新村卓実町長への説得の準備を始めた。

まなびじま奥尻プロジェクトのロゴ
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「全国から生徒を募集しますよ」と宣言しただけで生徒が集まるほど甘くない。教育長と町長への説得でも「あえて島留学する価値のある学校か」、それだけの魅力があるかが鍵になる。島留学制度を町に認めてもらうには、受け入れ体制を整備する前に本校が島外の生徒にとって価値があり、学校改善によって生徒の能力が伸びるという、上向きのベクトルを示す必要がある。

どうすればよいのか。校長や教職員たちが築いてきた学校に対する評価は悪いものではない。だからこそあえて、さらに厳しく高い視点で学校の課題を明確にする必要があった。前任の山下雅巳校長と共有していた課題、教頭として過ごした半年の中で、複数の町民から指摘された課題は、次の8つに集約できる。

▽課題1=地元の後継者を育てる農業、水産、工業、観光等が学べない▽課題2=地元に進学塾がなく、進学希望者を支援する環境が整っていない▽課題3=高等教育(大学、大学院レベル)、一部上場企業の関係者と接触がない▽課題4=真に地元の将来や発展につながる学習プログラムは現状スキューバダイビングしかない▽課題5=生徒が町のイベントの企画・運営に協力する体制がない▽課題6=部活動や大会で、外に出ていく機会は多いが、島外から来ることはない▽課題7=目に見えた形での中高一貫教育が確立されていない▽課題8=島外の生徒を受け入れる体制がない。

この8つの課題をどのように解決していくのか。多くの課題にどうメスを入れていくのか、頭を抱えた。教員は全員が本校が1校目の初任段階の教員と期限付き教諭だった。道立のころは密に連携してこなかった町との協働体制をどう構築するか。悩んだ末、状況を打破するためには教職員や町全体が一つになれるコンセプトを打ち出す必要があると気付いた。そして打ち出したのが「まなびじま奥尻プロジェクト」であった。