小学校「外国語」の課題を考える(2)狙いは口頭コミュニケーション力

eye-catch_1024-768_watanabe_fin国立教育政策研究所名誉所員 渡邉 寛治

2011年度から小学校で「外国語活動」を始めた狙いは何か。「外国語を通じてコミュニケーション力の素地を養う」ためだ。外国語そのものの習得が目的ではない。具体的には、英語を用いて(1)「誰とでも積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度(資質)」の育成(2)コミュニケーション力の源泉である「思考・判断・表現」の諸能力の素地を養う――ためである。

「外国語を通じてコミュニケーション力(資質・能力)を育む」との教育理念は、1989年の学習指導要領改訂時の中・高等学校外国語教育の目標でもある。中・高で6年間学習し英文読解力が身に付いても、外国の人とのコミュニケーションとなると「借りてきた猫」になる生徒がいる。上記(1)(2)の資質・能力が身に付いていないからだ。そこで、国は小学校から英語によるコミュニケーション力の育成を目指す教育を開始。上記(1)の育成に重点を置いた。

2020年度から施行する中学年の「外国語活動(領域)」および高学年の「外国語(教科)」の狙いは同じである。「外国語活動」では、英語によるコミュニケーション力(資質・能力)の素地の育成を、「外国語」ではその基礎の育成を狙いとする。小学校の教員研修では、この狙いが深く認識されておらず、驚かされることがある。

小学校の新学習指導要領「外国語」では、「読むこと」「書くこと」の言語活動で培う間接コミュニケーション力よりも、「聞くこと」「話すこと」の言語活動で養う直接コミュニケーション力(口頭コミュニケーション力)の基礎の育成に主眼が置かれている。高学年の「外国語」では英語の音読や文字の書写も多少行うが、ALTとの異文化コミュニケーションができなければ、既述の狙いを実現化する教育とは言い難い。その方が意義深い教育であるといえよう。

筆者の教え子にTOEICで高得点(830点以上)を取得したが、外国の人とのコミュニケーションが苦手な大学生がいた。中高時代に外国の人との活発なコミュニケーション体験がなかった。水泳の泳ぎ方の知識を机上学習で100%理解しても、実際の体験を積まないと泳ぎに自信が持てないのと同じである。

小学生時よりALTとの触れ合いを多く体験すると外国の人とも臆せずに接することができるようになる。ALTからは「常に気持ちや考えを形成、整理、再構築し、積極的にコミュニケーションを図る」ことの大切さを学ぶ。その結果、主体性が培われる。ALTとのTT体制による活動を実践してきた学校の教育成果である。「真に子どものためになる教育」をしたい。

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