まなびじま奥尻 ―離島の町立高校の挑戦―(6)魅力化への学校改善と全国募集への決断

eye-catch_1024-768_tawaraya_fin北海道奥尻高校校長 俵谷俊彦

町おこしワークショップと同時に進めていたのが、「総合的な学習の時間」を使った「奥尻パブリシティ」である。総合的な学習の時間は、スクーバダイビングとキャリアスタディという二つのコースの選択制である。スクーバダイビングは、24年前から町の全面的支援を得て行っている本校の特色ある教育活動であり、奥尻の環境保全について考える素晴らしい探究学習として定着していた。

キャリアスタディも探究活動を行っていたが、個々人の趣味的なテーマについての探究であり、町の活性化という視点はなかった。町立移管に当たって、松井教務部長が中心となり、キャリアスタディを「奥尻パブリシティ」に大改編し、町の魅力創造・発信を主たる目的とした探究学習をデザインした。町の課題を特定し、その具体的な改善策を考案し、町長に直接その改善策を提示するという活動だ。昨年度、今年度と生徒の発表は町に大きな反響を呼んでいる。

イングリッシュサルーンで学ぶ町民ら
イングリッシュサルーンで学ぶ町民ら

町に学習塾がないという課題と、町の観光業の課題であるインバウンド観光客の増加に備え、受け入れ体制を構築するという2つの課題を同時に解決する手段として、「イングリッシュサルーン」を発足。中学生以上の町民を対象に、2週間に1度行われている。本校の英語教員のほか、島内の2中学校の教員らがボランティアとして協力、英語などの学習支援を行っている。

年度当初から学校の魅力化のスタートダッシュを決め、軌道に乗った5月下旬。町教委の石島孝司教育長からの承諾を得て、ようやく新村卓実町長に島留学に向けた計画を説明する機会を得た。町長の説得は難航した。生徒の受け入れ先となる宿舎の確保と、島への留学生に対する補助金が問題となった。町長に月2万円を宿舎のオーナーに、1万円を留学生に補助できないかと提案。町長は迷っていた。財政状況が厳しい中、高校教育のさらなる魅力化は、予算の優先順位が低いのも仕方がない。

そんな思いが頭をよぎったそのときであった。

「これは移住を促す、町活性化の起爆剤になるのではないですか。生徒が来て、親御さんも足を運んでくれたら人の流れが生まれます」。熟考する町長に対し、町教委の若手リーダーである櫻花幸久主幹が熱い想いをぶつけ援護してくれた。しばらくして町長が言った。「分かった。すぐに寮を作るのは無理としても、下宿に補助金を出します。でも、請け負ってくれるところがあるかだな」。

「これから始まるぞ」という喜びと気合がみなぎった。すぐに、島内の二十数件の民宿や旅館を一軒一軒回り始めた。