まなびじま奥尻 ―離島の町立高校の挑戦―(7)全国募集開始―5人の島留学生が入学

eye-catch_1024-768_tawaraya_fin北海道奥尻高校校長 俵谷俊彦

島留学の実現に向け、交渉のために訪問した民宿や旅館の経営者たちからは、最初はなかなか色よい返事がなかった。事前に相談した観光協会からも、非常に難しいという所見を得ていた。希望を失いかけていた。

数件目に訪れた島内でも有数の人気を誇る旅館のオーナーから「いいよ。1部屋なら協力するよ」と言ってもらった。「本当ですか」と思わず叫んでしまった。島の青苗地区にある民宿では、ご主人から「いいことだ。島にとって必要だ。部屋全部使ってけれ」とも言われた。島の西側にある民宿の女将は「聞いておりました。素晴らしいことです。5部屋ありますので、どうぞお使いください」と言ってくれた。後に、「島おや」(宿舎のオーナー/管理人)となってくれた人たちである。「島には、こんなに本校の支援者がいる」。趣旨に賛同してくれ、新たな歴史を作ろうとする人たちがいることに、心からうれしくなった。

校長1人の力では、到底、島留学の体制など作れるはずもない。町長にはもう一つお願いしたことがあった。島留学の受け入れ体制として、学校、町教委、役場の地域政策課が一体となって進められるよう、「島の房暖ロッジ取次団」という組織の結成であった。町教委の学校教育局長を団長に2016年度中に17回の会議を開き、協議・検討・立案したことを、とにかく素早く上司や関係団体に掛け合い、承認を得て実行できる組織にした。

島の暖房ロッジ取次団の会議
島の暖房ロッジ取次団の会議

とにかく早かった。町長への説明後に動き始めたこの組織は、(1)島留学生の受け入れ宿舎の確保(2)島留学生への支援金、宿舎への補助金の予算確保(3)昼食支給業者への補助(4)全国募集の広報、説明会等の計画(5)島おじ島おやの公募等(6)島留学生受け入れ宿舎等の会議の設定――などの懸案事項を集約して実施策の検討を重ねた。行政主導による通常の協議会よりも、実行に移すスピードは段違いに速かった。

この房暖ロッジ取次団の組織的な動きにより、8月初旬には4宿舎14部屋の確保ができ、さらに協力を申し出てくれた宿舎も現れ始めた。「これで全国募集ができる」と意気込んだ。早速、ホームページやフェイスブックへの情報発信を行い、報道各社にも協力を求めた。生徒募集の全国説明会や本校でのオープンキャンパスを開催した。

1年目とあって、説明会などに参加した生徒や保護者は非常に少なかったが、翌年の17年度入学者選抜への出願者が8人も現れ、結果、5人が入学することになった。「えっ、奥尻高校に5人も留学生が来るの?!」。町民だけでなく、北海道民にとっても大きなニュースになった。