米国国務省 招聘プログラム参加リポート(1)米国の教育制度

eye-catch_1024-768_komiyama_fin教育新聞特任解説委員 小宮山 利恵子(リクルート次世代教育研究院院長)

今回から、先ごろ約1カ月にわたり参加した米国国務省招聘プログラムに関する内容を4回に分けて紹介したい。同プログラムは、米国のICT教育現況を理解する目的で行われた。ワシントン、ボストン、ルイビル(ケンタッキー州)、サンフランシスコを巡り、さまざまな学校や教育・行政機関、スタートアップ、NPOを訪問した。

第1回は、米国の教育制度について考察する。

米国の最大の特徴は、非中央集権であることだ。合衆国憲法修正第10条において、「本憲法によって合衆国に委任されておらず、また州に対して禁止されていない権限はそれぞれの州または人民に留保される」と定められ、連邦政府の権限は限定されている。公立学校に関する総合的な権限は州に委譲されている。多くの州においては、州憲法で教育原則が規定されており、州議会が最高権限を持つ。

米国の教育省
米国の教育省

その州政府は次の項目について責任を負う。

▽カリキュラムの指針策定▽教員への免許授与▽州全体の生徒対象の学力テスト実施▽生徒の成績に関する報告書の立案および連邦政府への報告▽年間授業日数の下限設定――など。

学力テストの実施は、2002年のブッシュ政権時に成立したNo Child Left Behind Act(落ちこぼれ防止教育法)で制定された。読解力、数学、科学について、3年生から8年生まで毎年1回、10年生から12年生の間で少なくとも1回は学力テストを実施する必要がある。

15年のオバマ政権時に成立したEvery Student Succeeds Act(一人一人の子供たちが成功する法・ESSA)でも、それは継承された。

テスト結果は、性別、人種別、収入別などで報告する必要があるほか、ESSAではホームレスの子供、孤児院などに在籍する親不在の子供、軍人の親を持つ子供についても報告が義務付けられるようになった。双方とも、子供たちの学力向上を目指した教育改革の画期的な法である。

州の下には学区があり、その数は全米で約1万5千区。多くの州は公立小・中・高校の運営を学区に任せ、学区が学校を監督している。

その学区の役割は、予算の決定、教員の採用、設備や備品の購入、教員の給与の決定など多岐にわたる。

ここまで見て分かることは、州や学区における裁量権が幅広く、地域ごとの課題に細かく対応できるということである。

加えて、先日、米NPOが発表した調査結果によれば、ESSAに基づいた教育計画として全米50州のうち39州で個別習熟度別学習(Personalized Learning・PL)が盛り込まれたとのこと。チャータースクールなどを考慮すれば、全州ですでに取り組まれていると考えても差し支えない。

米国は算数・数学の学力が低い傾向にあり、特に8年生の「代数学1」を理解できるかが、その後の学力を決めると言われている。そのため、PLをまず算数・数学から導入する学校が多い。