中学校道徳科の授業―道徳的判断力を養う―(3)授業実践①「言葉の向こうに」

修正:eye-catch_togami東京都品川区品川学園 主任教諭 戸上 琢也

第3回からは、実践事例をいくつか紹介する。文科省の道徳教育教材集『私たちの道徳』に掲載されている教材「言葉の向こうに」の授業実践である。この教材を用いて、「相互理解、寛容」を狙いに授業を行い、加えてネット上のコミュニケーションについても考えさせた。

授業展開では、生徒同士の感想の交流から出てきた場面について、一つ一つ考えていった。まず、A選手の大ファンである加奈子が、別の選手のファンから「A選手は最低の選手」と書き込まれたときの加奈子の気持ちを考えた。そこから、「どうして加奈子はひどい言葉で応酬し、書き込みがエスカレートしたのか」「どんな思いから、書き込みを行ったのか」、問題を追求していった。

その後、「もし、自分が加奈子だったら、一体どんな大事なことに気付いたのか」「なぜ、それが大事なのか」について、付箋紙を活用したワークシートを用いて議論した。議論の中身を可視化することで、生徒の理解が深まり、発言しやすい環境が生まれる。教師も、付箋紙を貼ったワークシートを見返すことで、議論の様子が分かり、評価への活用ができる。

考え、議論するワークシートと議論するシートの例
考え、議論するワークシートと議論するシートの例

議論している間は、教師がインタビューする形で各グループを回り、画用紙に生徒の意見を吸い上げて掲示しながら、学級全体で考え合った。このことによって、議論の時間も十分確保でき、教師も議論に参加することができる。

終末では、本時で学んだことを生かし、実際に加奈子役になって、その後どのような言葉を書き込むかをペアで交流し、授業を終えた。

授業後の生徒の反応は次の通りである。▽周りの意見も一つの意見として捉えることは、自分にとっても、周りの人にとっても大切なことだと思った▽相手の表情によって、今考えている思いが分かることに共感した▽ネットじゃなくても、普段の生活で、人のことを考えるというのはものすごく大切なことだと思った▽言葉の力は大きいなと改めて分かった。インターネットは便利だが、相手のことをしっかりと考えないといけないと思った――。

今回は、問題解決的な学習を中心とした道徳科の授業実践だったが、その中には、自我関与の学習や体験的行為の学習も含まれていた。このように、多様な指導方法を取り入れることによって、生徒の「主体的・対話的で深い学び」が実現できると考えている。

なお、本授業の実践は、東京都の『いじめ総合対策【第2次】』の下巻「実践プログラム編」に掲載されている指導案を参考にした。