中学校道徳科の授業―道徳的判断力を養う―(4)授業実践②「カーテンの向こう」

修正:eye-catch_togami東京都品川区品川学園 主任教諭 戸上 琢也

前回は、中学2年生が対象の「言葉の向こうに」の実践を紹介した。今回も中2を対象にした「カーテンの向こう」の授業実践を紹介する。

「カーテンの向こう」は、中学校のどの学年でも実施できるもので、最近では小学6年生で活用している学校も多い。この教材は、重症患者がベッドに並んで横たわっている病室の一室での話である。病室で唯一の楽しみは、閉ざされた窓に一番近いヤコブが話す外の様子だった。ヤコブだけ外が見えることをうらやましく思っていた主人公の「私」は、徐々にヤコブに対して憎悪を抱くようになる。やがてヤコブが亡くなり、窓に一番近いベッドに移ることができた「私」は、やっとの思いで窓の外をのぞいてみた。しかし、そこには冷たいレンガの壁があるだけだった――。

授業では「私」に焦点を当て、「人間の弱さ、醜さを克服し、どのように生きていくのか」を考えることで、「よりよく生きる喜び」を狙いにした。他にも、ヤコブに焦点を当てて、「本当の思いやりとは何か」をテーマに、「思いやり、感謝」を狙いにした先生方も多いだろう。

カーテンの向こうの教材提示
「カーテンの向こう」の教材提示

今回、この実践を行う上で工夫した点は二つある。第一に、この教材は最後にどんでん返しがあり、読む側に衝撃を与える教材であることから、教材提示の仕方を工夫した。パネルシアター形式で教材の場面絵やカーテンの装置を用意し、教師が範読していった(写真)。教材提示の工夫は授業の肝であり、物語の世界に興味・関心を持たせ、主人公になりきって考えるのに大事な手立てである。

第二に、道徳的な判断力を養うという点で、「私」が、ヤコブが外をのぞいて楽しい話をしていたのは、実は冷たいレンガの壁だったと分かり、「もし、自分だったら、この後どうしますか」という発問を、授業の中心的な課題として設定した。「私」が、ヤコブを憎く思った自分自身の醜さに気付き、これからどのように生きていくかの判断を生徒に問うた。クイズ的な当てもの感覚にならないように、考えた根拠や理由を明確に述べさせることが重要である。

生徒からは「ヤコブに申し訳ない。だから、本当のことを言って、ヤコブはいい人だったとみんなに思ってもらう」「ヤコブに感謝し、ヤコブのやってきたようにする」「この場所にはいられない。別のところに移り、他のみんなに直接見てもらう」などの意見が出た。授業はこれだけでは終わらなかった。この授業をした後、生徒たちから、「ヤコブの生き方ってすごいよね」などの会話が起こり、後日、朝学活の時間に、ヤコブの生き方について学級全体で考えた。