「困った子」は「困っている子」(1) 一番困っているのは子供だ

元東京都日野市立小学校長 京極澄子

2007年度、通常学級において特別支援教育がスタートし、発達障害の可能性のある児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、適切な指導および必要な支援を行うことが明示されました。それまでも、教師は多くの努力をしてきました。

しかし、発達障害への理解と対応は十分とは言えず、子供が自尊感情を低下させたり、集団不適応や不登校の二次障害を負ったり、いじめが起こったりすることがありました。

10年が経過した今、発達障害への理解は進み、指導方法が研究・実践されてきています。その中で、学校間の格差や教師の個人差が大きいことが課題となっています。

校長のリーダーシップの下、子供の困難さを早期に把握し、適切な支援を継続的に実施している学校もあれば、担任任せにしている学校もあるようです。

東京都が13年度に実施した教員の意識調査では、小学校で54.9%、中学校で60.2%の教員が「発達障害に関する知識はあるが具体的にどう対応すれば良いか分からない」と答えており、通常の学級における発達障害の児童生徒に対する指導の充実が急務だと指摘されています。

新学習指導要領でも、通常学級の困難さのある児童生徒について、各教科で指導内容や指導方法の工夫を計画的、組織的に行うことが示されました。

私は、07年度より8年間、日野市立日野第三小学校で校長を務めました。その間、日野市は、全校(小学校17校、中学校8校)650人の教師が明星大学教授・小貫悟先生の指導の下、「ひのスタンダード」という基準を設定して特別支援教育を進めてきました。その合言葉は「困った子は困っている子」。

一番困っているのは子供だ、という出発点です。教師は児童生徒の困難さへの理解を深め、さまざまなアイデアや指導の工夫で対応を重ねました。2、3年後、その取り組みが校内で共有された頃からどの学校も落ち着き、困っていた子供たちが徐々に意欲を取り戻し、うれしそうに学ぶ姿が見られるようになっていきました。

学校や教師が変わり、子供が変わったのです。その変化は、困難さのある子供たちだけにとどまりませんでした。

この連載では、それらの実践を通し、全ての子供たちが、生き生きと学ぶ教育の方法について考えていきたいと思います。