「困った子」は「困っている子」(3)子供を包み込む状況を整える

元東京都日野市立小学校長 京極澄子

発達障害の可能性のある児童生徒は、「学習の仕方」「刺激量」「場が構造的であるかどうか」という状況に左右されやすい特質があります。このため、状況を整え、困ることを減らすことが支援の基本になります。

実は、つまずきのある子供のために整えた状況は、他の子供にとっても安心して生活できる学校、分かりやすい授業になっています。これは、「障害のある人にとって使いやすい形態を追求していくと、全ての人にとって利便性のあるものが作られていく」というユニバーサルデザインの発想と同じです。

学級にはさまざまな子供たちが在籍しています。困難さのある子だけではありません。「すべての子にとって有効な方法」という視点は、通常学級では欠かせません。

 特別支援教育の導入当初、教育現場では、困難さのある児童生徒に支援員を付けるなどの個別的な配慮の充実を真っ先に考えました。しかし、個別的な配慮に偏った支援では、教師の目や心がその子供から離れがちで、学級の一員であるはずの子供が集団の中で認められ、鍛えられるチャンスをなくす可能性があるのです。教師の対応力も育ちません。

日野市では、子供を包み込む全ての環境(地域、学校、学級、指導、個別的配慮)を整えることからスタートしました。それぞれの環境を整えるに当たり、チェックリスト(学校環境31項目、学級環境8項目、指導方法13項目、個別的配慮19項目)を作成し、全教員が活用しました(次号から詳述します)。

チェックリストには、なぜ、その工夫が有効なのかについての理論的な説明も記されており、どの学校も教師も明確な基準を持って実践を積むことができました。日野市が短期間で特別支援教育を全職員に定着させ、実践を交流したり、継続したりできたのはこのチェックリストの役割が大きいと考えています。