中学校道徳科の授業―道徳的判断力を養う―(10)これからの道徳科

修正:eye-catch_togami東京都品川区品川学園 主任教諭 戸上 琢也

「道徳的な判断力を養う中学校道徳科の授業」という題でこれまで、実践事例を中心にさまざまな工夫について紹介してきた。最初に示した付せん紙を活用した道徳科学習で紹介したように、学習活動や発問の仕方などはあくまで一例であり、扱う教材やそれぞれの生徒の実態に応じて、各先生方の持ち味を生かした工夫が大事である。もちろん、道徳科の目標にもあるように道徳的な判断力だけではなく、道徳的な心情や実践意欲、態度を含めて、年間を通じて道徳性を育てる指導計画を構成していく必要がある。

道徳教育の視点に立つと、道徳科の指導を要として各教科や領域の指導との関連を図り、全教育活動を通して道徳性を育てていく工夫が求められる。そのような意味で、道徳科の全体計画の別葉(各教科や領域の指導との関連)を作成し、各教科や領域と密接に関連を図り、教育効果を高めていくことで道徳科の指導を日常に生かしたい。

例えば、道徳科で「C 遵法精神、公徳心」を狙いに「二通の手紙」(文科省『私たちの道徳』)を行ったとき、この時間だけで「決まりの大切さ」を考えるのではなく、修学旅行の集団行動と関連させたり、社会(公民的分野)の「現代社会を捉える枠組み」の効率と公正の授業とを関連させたりすることで、知識として理解するだけでなく、体験的にも問題解決的にも考えることができる。このような指導の関連を図ることが、今後ますますカリキュラム・マネジメントの視点で求められるだろう。

品川区の市民科で育てる資質・能力(2018年3月現在)

本校がある東京都品川区では、2006年度から、「道徳」「特別活動」「総合的な学習の時間」のカリキュラムを統合させた区独自のカリキュラム「市民科」を実施している。市民科では▽主体性▽積極性▽適応性▽公徳性▽論理性▽実効性▽創造性――の七つの資質を重視し、それに応じて5領域15能力に分けて、各単元が構成されている。

各単元の中で、道徳科の学習で考え議論したことを基に、学級で自分たちができることは何かを話し合って、学校行事に生かしたり、あるいは人権教育や国際理解教育の学習に生かしたりしている。より実効性のある力につなげる単元構成となっている。

一方、市民科の課題として、道徳科の内容項目が全て網羅されているわけではない点や、実効性のある力を育てることが重視される反面、その内面的資質である道徳的な判断力や心情を育てる点が弱いことは今後の課題である。

これからの道徳科の学習をより実効性のあるものにしていくためにも、授業改善はもちろん、各教科や領域などと関連を図った総合的なカリキュラムへの改善が求められる。

忘れてはならないのは「心を耕してこそ人は豊かに成長する」ということである。

(おわり)