世界の教育はいま~各国の教育ICT化から見えるもの(2)英国 小学校から時代に合わせたICT教育

武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部・上松恵理子准教授

英国では1995年、小学校のナショナルカリキュラムに教科「ICT教育」が入った。これは日本でいえば、教科「情報」が必修化されたイメージだ。しかし、2014年にはそれを廃止した。WordやExcelの使い方を一斉授業で教えるだけで、学習者も受動的で、新しい時代のニーズに即していないからだった。

それに代わり、新教科「Computing」がスタートした。デジタルリテラシー、コンピューターサイエンス、インフォメーションテクノロジーの三つがバランスよく入った内容になっている。

以前、日本の中高一貫校に当たるTownley Grammar校を訪問し、高校2、3年生のプログラミングの授業を中心に見学した。どの教室でも全生徒が1人1台のコンピューターを使用し、課題解決学習を行っている様子が印象的であった。

同校の教科「Computing」の授業は、小学校教員が申し込めば生徒と教員が一緒に見学できるよう、受け入れ体制が整っている。副校長によると、こうした交流によって小学生がプログラミングを理解すると同時に、小学校教員は教科「Computing」のさまざまな教材と、それに沿った効果的な教育方法を知ることができ、教員教育にもなっている。さらに小学校教員にとっては、新教材を作ったり、指導案を考えたりすることへの負担軽減にもつながっているという。どの学校にとってもプログラミング教育を行える教師の採用は、教育の鍵になるとも述べていた。

新設された教科について、外部機関が学校に教材や授業方法を提供しているのも特徴だ。ある機関では、カリキュラムやアセスメント、教科書教材を提供し、さらに授業だけでなく柔軟な内容でワークショップの方法も教えていた。

これらの機関のウェブサイトには豊富なリソースがあり、教師が自由にダウンロードして授業で使うことができる。小・中学校が連携した系統的な教科学習も可能になる。

新教科の試験問題や評価については、国の四つの機関が行っている。私が訪れたOCR(Oxford Cambridge and RSA Examinations)では、優れた高校教員を集めて新教科の評価方法の策定や模擬試験作りが行われていた。

英国の学校では暗記が中心ではなく、ITがどういった情報システムや社会のデザインに取り込まれているのかを考えさせる授業が多かった。日本も早い段階で1人1台の環境を整えるのはもちろんのこと、課題解決型の学習スタイルや、英国のようなICT教育を構築するための機関の設置は検討に値するだろう。

関連記事