世界の教室から ニュージーランドの教育イノベーション(上)

財政難からの教育改革 学校独自にファンディング

武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部准教授 上松恵理子

■世界各国の「いいとこ取り教育」

ニュージーランドは、かつて1NZドルが400円近かったほど豊かな国であった。しかし、EUの統合などが大きな打撃となり、財政は窮地に陥った。そこで同政府は、政策を大きく転換することでこの難局を乗り越えた。

当時の改革は、行政改革、医療改革から働き方改革まで多岐にわたる。医療については電子カルテを世界でいち早くとり入れた。個人のデータとして管理されているため、医療費だけでなく保険料にも関わる。さらに、国家公務員の6割削減や、国家事業の8割もの凍結、および中間組織を無くしITを使うことでコストカットを行った。もちろん教育改革も例外ではない。

いろいろな国を調査研究してきたが、ニュージーランドは各国のICT教育の良い所を取り入れた「いいとこ取り教育」といえる。

Wi-Fiはほぼ全ての小・中・高で完備され、中庭にもWi-Fiが飛んでいることは珍しくない

▽ラーナーセンタード(学習者中心)で個々に応じた学習スタイルを構築▽アクティブ・ラーニングで学習者が1人1台のパソコンを使い、全ての教科でICTを学習ツールとして使う▽学校独自で行うことが可能な、学年を超えたカリキュラムの柔軟性▽保護者とのやりとりをはじめ、教員の公務の全てをクラウドで教務情報化▽学び直しの機会が保証されている――これらについて紹介したい。

■学校独自のファンディングでWi-Fiを完備

当時の大きな改革としては、学習指導要領を廃止したり、教育委員会を廃止したりした。また、現場に権限や決定権が与えられた。そのことにより、その後に起こったクライストチャーチでの大地震では、国からの要請を待つことなく、迅速に対応することができたという。

一方で、国の補助金が停止して資金が潤沢に来なくなったことから、学校独自でファンディングを行うようになった。訪問した学校には、いずれも校長が2人以上いて、1人の校長は日本と同じように校内の対応をするが、もう1人は企業などの渉外的な役割を担っている。私のような海外からの訪問者を担当するのは、後者の校長である。

1人1台のタブレット端末は、どこの学校にも用意されている

ニュージーランドの小学校では、校長がいろいろな企業を回って資金集めをしてタブレット端末の購入にあてているケースが少なくない。個々の学校で努力して資金を得た結果、Wi-Fiはほぼ全ての小・中・高で完備され、1人1台はどこの学校にも準備されている。中庭にもWi-Fiが飛んでいることも珍しいことではない。パソコンをネットにつないで学習をしていることは日常的である。また、自分のパソコンを持ってきて学習することも自由で、私の訪れたクラスは3人ほどが自宅から持参して使っていた。

資金集めとして、卒業生が学校のために寄付した物品をオークションにかけることもある。さらには、学校の敷地内に演劇場やコンサートホールを作ることも積極的に行い、コンサートの収益を収入源としてWi-Fiを完備したり、IT機器を購入したりしている。