世界の教育はいま~各国の教育ICT化から見えるもの(3)シンガポール 実践スキル重視で新教科設置

武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部・上松恵理子准教授

シンガポールは、多民族・多言語・多文化国家で、東南アジアの中では貿易、交通および金融の中心地の一つだ。小学生は家でマレーシア語や中国語、インドネシア語を話すにもかかわらず、学校では全て英語で授業が行われていた。第二外国語は必修なので、必然的に3カ国語を理解できるようになる。

Nan Chiau Primary Schoolを訪問すると、やはり全て英語で授業が行われていた。最初に見学した小学2年生の教科「Applied Learning lesson」では、stop motion animationと呼ばれる活動が行われていた。まず箱庭を作り、そこに配置した物を少しずつ動かしながら写真を撮影し、それをつなげて動画のようにするものである。

この活動は、創造力を培うことが目的である。1年生の同じ教科も見学したが、こちらでは、hopscotchというアプリを使ったプログラミングの授業が行われていた。午前中の授業の最後には、子供たちが主体の「Q & A and Feedback」という時間が30分設けられていることも、学習定着の観点から有意義な活動と感じた。

副校長によれば、国が定めた新カリキュラムでは「これまでの理論中心の受け身的な学習から、実践スキル重視への移行が重要」とされており、時代に対応したスキルを身に付けるため、新教科が設置されたという。

次にシンガポール国立大学を訪問した。この日の講義は、海外の大学入試問題を翻訳ソフトにかけて、その内容を討論する授業だった。日本の入試問題も対象で、海外の大学との傾向の違いが話題になったそうだ。シンガポール大学はYale大学と提携しており、留学せずに米国の教育を受けることも可能だ。勉強がとても忙しく、アルバイトをする学生はいないという。

就職のための教育訓練を受ける機会を提供する職業訓練校ITE(Institute of Technical Education)も訪問した。ここは国立の教育機関で、中学卒業後に高等教育機関に進まない生徒を受け入れている。そのITEの教室で、日本のある企業のロゴが貼ってあるのが気になった。

聞くと、高価なIT機器を寄付してもらったお礼の気持ちだという。この日本企業は、日本の複数の学校に寄付を申し入れたが断られたそうだ。海外の学校には、寄付の制約が少ないように思う。日本でも教育の平等担保をした上で、こういった寄付を受け入れる方法も考えていく必要があるように感じた。

日本でも今、新教科の設置が検討されている。社会が大きく動いている今、スピード感も必要なのではないか。