世界の教育はいま~各国の教育ICT化から見えるもの(4)オーストラリア 段階踏み着実にICT化を実現

武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部・上松恵理子准教授

クイーンズランド州の学校ではICT教育が日常的に行われており、既に小学校段階からロボティクス教育やプログラミング教育が導入されている所もある。全国の小学校で子供たちが使用するパソコンは一人一台で、自分のパソコンを学校に持ち込んで使用するBYOD(Bring your own device)方式の学校が多い。

同州のICT化のプロセスを見ると、BYODに一気にシフトしたわけではない。まず、15年以上前からネットにつながれたパソコンを教室や廊下に常備配置し、自由に使わせることから始めた。

その後、パソコン教室の設置とICT支援員を配置する一方で、ICT教育教員研修やデジタル教材のプラットフォームを整備した。その上でデジタル教材を制作し、ゆっくりとICT化を進めた。現在はさまざまなコンテンツがオンラインで提供されている。

これらと並行し、各学校のカリキュラムにもICT教育が導入された。義務教育で必須のため、小学校入学(日本でいう年長)と同時に全児童にメールアドレスが与えられている。児童は教師のブログから授業計画を閲覧したり、児童の作成した映像をDropboxに入れて共有したりといったことを3年生から行っている学校もある。

訪問したジンダリー小学校も15年以上前からICT教育の取り組みが始まり、豊富なデジタル教材が使われていた。授業直後には子供たちが授業の難解度をワンクリックで回答し、授業を評価するシステムが導入されていた。教師はその結果を見て、次回の授業時の復習時間や進度を調整する。

教員は午後5時には帰宅する。子供たちが持ち帰ったパソコンで行う宿題の進捗(しんちょく)状況を、帰宅後にリアルタイムでチェックしている教員もいるそうだ。テストではCBT(Computer-Based Testing)が採用され、教員の採点の負担が軽減されている。

豊富なデジタル教材が制作される背景には、教育を重視する政策に対する多額の投資がある。これを実行するためのC2Cという政府機関があり、選抜された約50人の教員が教材内容を決定。それを基に約150人のウェブクリエーターがデジタル教材を作る。

同州ではデジタル教材開発だけでなく、教育プラットフォームをしっかり構築することも重視してきた。そのため、ICT教育への移行がスムーズに進んだように思う。将来の子供たちのために、時代に沿った教育に十分な投資を長年行ってきた同州の事例は、日本が参考にすべきことが多いと感じた。

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