世界の教育はいま~各国の教育ICT化から見えるもの(7)スイス しっかりと根付いているリカレント教育

武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部・上松恵理子准教授

国際競争力ランキング1位のスイスは、物価も高いが、それに比例して国民の収入や生活水準も高い。このように経済の強い国を構築できた背景には、教育も関係している。

スイスでは中等教育後、8割は専門学校に入り就職をする。高等教育に進むのはたった2割だ。一斉入試や一斉就職がないから、就職後に大学や大学院に入るチャンスがいくらでもある。

例えば、プログラミングが好きな子供は専門学校を卒業後に大学に進学することも可能だ。いったん就職してその後に目的を持って大学に入る学生はモチベーションが非常に高い。スイスは銀行が多いことでも有名だが、大手銀行の取締役であっても、専門学校から就職し、その後に大学、大学院を経ているケースが多いという。リカレント教育が根付いている。

スイスでは新しい教育方法が取り入れられた場合、その後に経年研究調査が実施されているそうだ。調査はこれまで10年間、300クラス以上、教員や児童6000人以上に対して進められ、今後もさらに15、25年と続いていく壮大な調査だ。

高校では、物理、化学、数学などの複数の教科を合科にして行われている新しい教育方法の研究調査もある。小学校では、足し算と掛け算を両方同時に学ぶ方法も研究調査され、それらの結果、同時に学ぶ方が成績は良かったという。

教師が正解を一方的に教えるよりも、学習者に間違いのあるものと正しいものを比較させ、違いを考えさせる教育方法の方が、知識の定着率が高かったという。比較するだけでなく、その違いを自分なりに説明し、アウトプットすることも重要視されている。

近年、日本ではすぐに成果を求められる事例が少なくない。スイスの取り組みを見れば、それは愚かなことだと思い知らされる。20~30年後に成果の出る性質のものもあるのだ。スイスが世界で存在感を示すのには、こうした長期的視野があるのではないだろうか。

欧州には多くの国があり、言語も違う。一定の教育基準が参照され、国境を越えたカリキュラムの標準化も少しずつ進んではいるが、それぞれのカリキュラムに互換性が少ないことが問題となっている。

日本もさらなるグローバル化が進めば、日本企業が国内だけで生き残れるとは限らない。もしかすると、日本の教育カリキュラムが海外との互換性を持つことが必要な時代になるかもしれない。

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