立命館大学教授 湯浅俊彦
学校図書館が電子書籍の電子資料をあえて利用しないということは、デジタル・ネットワーク社会の今日、極めて重要な情報源を最初から無視することになります。例えば、近年、文学作品の電子化が進んでいますが、作家の個人全集は紙媒体で刊行することがコスト的に困難になっており、電子版しかないという事態が進展しています。
2010年6月に電子書籍として刊行が始まった「小田実全集」(小学館)は、2014年5月に4年の歳月をかけて完結しました。収録作品の半数以上が絶版だったため、作家の集大成が電子書籍でよみがえったといえるでしょう。
「小田実全集」の場合は、電子書籍版とオンデマンド版で同時出版する日本の出版業界では初めての試みでした。……
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