世界の教育はいま~各国の教育ICT化から見えるもの(8)スウェーデン 小学生から小説を創る国語の授業

武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部・上松恵理子准教授

 スウェーデンは、選挙のマニフェストのトップに教育を掲げると当選するほど、教育熱心な国だ。選挙期間には、小学生が各政党のテントを回り、政党ごとの主張をまとめるような授業があり驚いた。

 学校では、子供の人権を最重要視している。小学校1年生から全員に電子メールアカウントが与えられていることも「基本的人権であり、当然のこと」と教師たちは言う。ある小学校では、トイレの前で「トランスジェンダーなど、性の多様性を考慮し男女別にしない」と説明を受けたこともあった。

 ストックホルムのオールシタ小学校には、これまで3回訪問調査した。直近の調査では、インターネットは全ての授業で使われており、もはや使わずに授業をすることは不可能だという。分からないことはすぐに検索できるので、暗記よりも学習プロセスや創造性を重視する教育にインターネットはとても相性が良い。ネット上でいじめがあれば、スクールカウンセラーが対処する。

 国語の授業では、撮影動画を編集して発表したり、小説を書いたりするクリエーティブな活動が多くあった。作成した小説はネット上にアップロードされる。その結果、世界中から1700回もダウンロードされて人気になった児童の作品もあるそうだ。

 担当教員だけでなく、同級生、学校内外でも閲覧可能なので、より良い作品を書こうとする意識が高くなった。

 小学生に長文を書かせるには、紙と鉛筆だけでは大変だったが、パソコン入力するようになってからは、章の順番の入れ替えや誤字脱字のチェックが容易になり、長文が書けるようになった。

 書くことは理解の表出であり、その手段である。これは全ての教科にもつながることだ。社会のグローバル化でアウトプットの必要性は高まっており、書く活動も含め、ICT化は児童の学習をサポートするのに欠かせない。

 私が訪問した学校の中には、戦禍を逃れてきた児童を積極的に受け入れている小学校もあった。そこでは、アントレプレナーという起業のための授業があり、内戦で国を追われた児童が作ったアプリを販売するプロジェクトワークがある。その保護者にも国から手厚い語学プログラムが提供されている。

 PISAランキング低下の原因になっても、難民の受け入れはこれからも続けるという。児童を分け隔てることなく、学校で子供たちを支えていくスウェーデンの姿勢に心を打たれた。