世界の教育はいま~各国の教育ICT化から見えるもの(9)エストニア 電子政府への移行と国民総ICT化

武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部・上松恵理子准教授

エストニアはバルト三国の一国で、電子政府やSkype発祥の地などとして有名だ。電子政府に切り替えたことで、公的手続きの多くはネット上で行われ、人件費が大幅に削減された。ICT化で紙を使った非効率な作業が減り、働き方改革にも貢献したそうだ。

電子政府への移行を円滑にするため一番重要だったのは、国民がパソコンを使うことへのハードルを低くすることだった。そこで20年前からIT教育を推進してきた。現在、小学1年生からプログラミング教育が必修化され、全ての教科でパソコンを使うことにした。一方でお年寄りには、電話1本で役所の職員が家庭まで教えに行くという。

これらの手間を差し引いても、電子政府にした方が財政面で大幅な削減ができる。国のICT化で個人のICTスキルも高まり、公的サービスのほぼ全てがワンクリックで享受できるようになった。

私が訪れたリレキュラ校は、小学1年生から高校3年生までが通っている。エストニアでは、旧ソ連時代から小中高の児童生徒が同じ学校に通うのが伝統的である。小学1年生から1人1台のパソコン環境があり、日本でいうマイナンバーのようなものを毎時間入力し、ログインしてから授業が始まる。

この学校では、小学1年生でもスマートフォン所有率が90%。授業中に分からない単語があれば、自由に電子辞書代わりに使っているのが印象的だった。国語の授業は全てパソコン教室で行われていた。パソコン教室には、紙の本も置いてあり、ネットと紙の本の検索を同時に行うことが可能。毎時間ワープロソフトで長文を書かせる活動が行われていた。

毎週行われるプログラミング授業では、さまざまなソフトを使う。小学1年生は、主にビジュアル的なソフトを使っている。学年が上がるにつれ、必修化の成果が表れ、高度な内容に進化していた。ちなみに、タブレット端末を収納する箱が校務員の手作りだったので素晴らしいと褒めたら、収納箱を買う資金がないからだという。ICT化を推進するために、お金をかけるべきところはかけ、そうでないところは節約するやり方がこの国では徹底されている。

マイナンバーは日本で賛否両論があり、その使用はごく一部に限られているが、エストニアではあらゆる場面で使われており、教育も例外ではなかった。電子政府移行の背景には、国家まるごとICT実践が行われている成果があるのではないかと感じた。

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