世界の教室から 北欧の教育最前線 (2)スウェーデンの高校進学(上)

高校選択のうわさと真実

今年度の高校選択ガイドとして作られた学校教育庁のウェブサイトや動画が目を引いた。ウェブサイトの冒頭に、「ちまたでよく言われているが、真実ではない」と大きく書かれて紹介されている「高校選択の九つの神話」に、高校選択の理想と現実が映し出されていたからである。2回にわたって、これを通してスウェーデンの高校入学について紹介したい。


専門分野の選択

スウェーデンでは義務教育を終えた後、ほぼすべての生徒が高校に進学する。日本と異なって入学試験はなく、生徒による選択の自由が重視されている。

卒業半年前に生徒たちが、希望する学校や学科を選択して地区のセンターに届け出る。各学校の定員や、生徒の中学校での成績を鑑みて、センターが入学先を提示し、生徒がその提示を受け入れればそこで決定、異議があれば選び直し、最終的に6月ごろには入学先を決定する。

入試がない制度に魅力を感じる人も多いだろう。だが、選択もまた難しい。選択をサポートするために情報提供やガイダンスに力が入れられており、「九つの神話」も、そのガイドの一部に含まれるものである。

今回は、前半三つを紹介する。なお、以下はあくまでも、ちまたではよく聞くが「真実ではない」と書かれているものである。

学校教育庁による、高校選択の神話に関するポスター

①高校選択が将来を決める

高校の学科には、卒業後に進学を目指す学科として、自然科学、社会科学、人文、経済、芸術、技術の6学科があり、各産業分野の基礎を学ぶ職業系学科として、児童・レクリエーション、建設・設備、輸送機器・運輸、手工芸、自然資源活用、ホテル・観光、福祉・介護など12学科がある。

このような学科の種類を見ると、将来の職業につながっていることがよく分かる。学科選択の際は将来の職業を考える必要があるが、一方で、その選択が人生を確定してしまうわけでもない。生涯学習の機会が保障されているスウェーデンでは、後に専門分野を変更したり転職したりする可能性も十分にあるのである。

②自分に合う学校を見つけることが大切

友達が行くとか、学校の雰囲気で選ぶのではなく、自分が関心ある分野を学べる高校を選ぼうという呼びかけである。実際に高校選択は、学校の選択よりもまず学科の選択という色合いが強い。生徒は全国どこに住んでいても上記の18学科から選択でき、居住地域に希望する学科がない場合は、近隣地域の学校に入学できる。

進学か、就職か?
③大学準備系学科の方が、将来に広い可能性がある

特定の職業分野を念頭におく職業系学科より、進学を念頭におく大学準備系学科の方が将来の可能性が広いというのは、一見すると納得できることかもしれない。しかしここではそうではないと言われている。職業系学科で学んでも、その後に学び直したり、外国で働いたり、さまざまな道があるというのである。あくまでも、どの学科も平等であることが強調されているのだ。

スウェーデンでは1960年代より、全ての若者のための平等な高校を目指して改革を進め、全学科が同じ価値を持つことを重視して、入学や卒業の要件やカリキュラムを共通化してきた。だが2011年の改革では、各学科の専門性を強調し、大学準備系と職業系という二つに区分した。

入学や卒業の要件に差異をつけながらも、学科間の平等は守りたいことがあらわれている。この大学準備学科と職業系学科との差異化が、多くの「神話」を生み出した。

(本所恵=ほんじょ・めぐみ、金沢大学人間社会研究域准教授。専門は教育方法学)

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