世界の教育は いま 各国の教育ICT化から見えるもの(10)フィンランド 未来投資としての教育改革

武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部・上松恵理子准教授

フィンランドでは、プログラミング教育が2016年に必修化され、小学1年生から実施されている。今では、ほとんどの学校で教科書はデジタル端末で見ることができる。

15年に訪問したMaunulan Yhtei校は、数学と体育に特に力を入れている高校だった。数学の授業の中にプログラミング教育があり、新1年生から卒業試験を含む全ての試験がCBT(注1)で行われるようになるため、全ての教科でパソコンを使用していた。この学校は自分のパソコンを持参するBYOD方式をとっており、1人1台のタブレット端末が使われていた。教材は机上のタブレット端末でもプロジェクターでも確認できる。生徒が自らウェブ上の教科書を見たり宿題にアクセスして確認したりしていた。

教員は校務情報システムWILMAで生徒の出欠や成績、学習態度を入力する。学校によっては生徒同士で宿題の意見交換に使う例もあり、お互いの課題を見ることも可能だ。WILMAは学校のニーズによってカスタマイズできる。保護者もWILMAのアプリを入れればスマートフォンでリアルタイムに子供の出欠や授業態度を把握できる。

ヘルシンキ市内では、ヘルシンキ大学やアールト大学が作成したプログラミング教育指導方法についてのMOOC(注2)を週1回、教員研修として取り入れている学校もあった。プログラミング教育や新しい教育方法が入るため、教員は常に学び続けている印象を受けた。どこの学校でも支援員や教育実習の学生が出入りし、授業をサポートする姿が日常的に見られた。このサポートで教師も授業だけでなく研修にも専念できている。

フィンランドは、他の北欧諸国に比べると地理的に移民が多くはない。PISAで好成績を収め、各国から注目を浴びているが、他の北欧諸国と比べてICT化が進んでいるわけでもない。それにもかかわらず教育改革を進めるのは、国家経済の立て直しが求められる中での未来への投資といった面がある。グローバルな視点なくして国の発展はないと考えているのだ。

この連載では、教育のICT化に焦点を合わせて、各国の実情を紹介してきた。昨今、AIの普及で必要がなくなる職種が耳目を集めているが、AIを設計・開発する人材不足も声高に叫ばれている。

これからの時代を生きる子供たちのためには、高度情報化を前提にした未来社会を作り出せる教育が必要。そのための日本の教育ICT化は喫緊の課題になっている。
(おわり)

注1=Computer-Based Testingの略。コンピューターを使用しウェブ上で行うテスト。

注2=Massive Open Online Coursesの略。インターネットを通じて講義を無料でオンライン公開する取り組み、あるいはそのシステムを指す

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