世界の教室から 北欧の教育最前線(3)スウェーデンの高校進学(下)

職業系学科の挑戦

高校選択には「九つの神話」があるという。今回とりあげる後半六つは、職業系学科に関する人々の考え方を映し出している。


成績で進路を決める?
④ 中学校での成績を、職業教育で無駄にするな

スウェーデンには高校入試はないが、入学には一定以上の中学校の成績が必要である。スウェーデン語、英語、数学での合格、そしてこの3教科を含んで、中学校で学ぶ約20の教科の内、大学準備系学科に入るには計12教科、職業系学科は計8教科での合格が求められる。入学に必要な教科数の違いを見れば、合格教科数が多いなら大学準備系学科に行こうと考えるかもしれない。それに注意を促しているのである。入学要件に関わらず、学習したことは役に立つ。

⑤ 職業系学科に行くと、大学進学条件を満たせない

大学進学について明確に決めておらず、進学の可能性は残しておきたいと思う中学生は多い。スウェーデンでは大学入試もなく、高校の成績で入学が決まる。大学進学のためには、高校で一定の科目を履修・修得しなければならない。

以前は、どの学科も必修科目のみで大学進学要件を満たしたが、2011年に職業系学科と大学準備系学科に区分されて以降、職業系学科では必修科目だけでは大学進学要件を満たさなくなった。そのためこの「神話」が生まれたのである。

しかし希望すれば、選択科目として指定の3科目を履修すれば大学進学は可能である。もちろん、高校卒業後に成人教育機関で学習することもできる。

将来の職業を考える
⑥ 高卒では仕事が見つかりにくい

将来の職業は、男女問わず大きな関心ごとである。スウェーデンでは古くから産業別労働力需要の推計が行われ、高校の学科選択の参考資料として提示されてきた。ここでも、今後5~10年間就職しやすい10の職業が示され、高卒での就職可能性を現実的に示している。

⑦ 外国で働きたかったら、職業系学科に入ってはいけない

EU圏内での留学や就職は、高校生にとっても身近になっている。国際的に認証されている職業資格取得を目指す職業系高校もある。

⑧ 職業系学科は、勉強したくない生徒が行くところだ

上述した入学要件の違いや、教育課程に英語や数学などが少ないことから、こうした考えを持つ人は少なくない。しかし、職業系学科にも専門分野の理論的な学習が多くあり、座学も必要になる。

⑨ 徒弟教育は、他でついていけない人のためのコースだ

2011年の改革で、職業系学科において高校3年間の半分以上を職場実習にあてる、「徒弟教育」コースが設置されることになった。学校での座学が少ないため、学校に行けない生徒のためのコースという印象がある。しかし、学校で学ぶコースと同じ科目履修があり、大学進学のための学習もできると説明されている。

多くの「神話」で、職業系学科のイメージアップがはかられている。すべての学科が平等と言われながらも、そう受け止められてはいない点もあるのだ。世間の考えに対して、すべての項目でデータや事実を伴って説得的な説明が試みられている。うわさを乗り越えて、平等を目指す挑戦とも言えるだろう。その挑戦の成果は、生徒たちの高校選択に表れる。今年度もそろそろ選択が終わり、8月半ばの新学期を待っている。

(本所恵=ほんじょ・めぐみ、金沢大学人間社会研究域准教授。専門は教育方法学)