漫才づくりが教育を変える(9)緊張感がアクティブにする


東京理科大学教職教育センター准教授 井藤 元





前回、場の空気が重い場合、漫才師たちは空気を瞬時に察し、状況を変える技術を身に付けていると述べた。だが、彼らはそもそも完全なホーム(安全)を望んでいるわけでもないのだ。この点が複雑で面白い。

優れた漫才師は緊張感と付き合うのがうまい。緊張感を味方につけることで観客の心をつかむすべを知っている。たとえ何度も舞台で披露しているスベリ知らずのテッパンネタであっても、慣れすぎてしまうと一つ一つの言葉の勢いが半減してしまい、観客の心を捉えることができない。ゆえに漫才師たちは惰性を恐れている。予定調和は彼らの敵なのだ。漫才師たちの主戦場である舞台(ライブ)の本質は、その「一回性」にあり、いま・ここでしか体験できないパフォーマンスを享受するために観客は劇場へと足を運ぶ。慣れは一回性の本質に反するため、避けねばならない。

緊張感を保つために漫才師が行っている工夫は、教師にとってヒントの宝庫である。……

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