子供の眠りが危ない 睡眠負債を知ろう(1)脳の働きに悪影響を及ぼす

雨晴クリニック副医院長 睡眠専門医 坪田 聡

睡眠と覚醒のリズムは、「体内時計」と「睡眠物質」の二つでコントロールされている。体内時計は、夜になったら眠くなり、朝になったら目が覚める、というのが働きだ。一方、睡眠物質は、長い時間起きていると睡眠物質が脳にたくさんたまって眠くなり、眠っている間に睡眠物質が分解され、量が減ると目が覚めるという仕組みになる。

この睡眠と覚醒のメカニズムから考えると、たくさん眠っても「寝だめ」はできない。私たちは、起きている間にたまった睡眠不足を眠ることで返しているだけなのである。

睡眠不足は「睡眠の借金」とも言えるが、脳内にたまった睡眠物質が分解されて借金がゼロになったら終わり。寝だめで「睡眠の貯金」はできないのだ。睡眠医学では、睡眠不足のことを「睡眠負債」と呼んでいる。

厳密には、「睡眠不足=睡眠負債」なのだが、一般的には、毎日の睡眠が足りない量を「睡眠不足」、睡眠不足がたまっている状態を「睡眠負債」と捉えるとイメージしやすいだろう。

睡眠負債が大きくなると眠気が強くなる。常に睡眠負債を抱えている人の中には、自分で睡眠不足を自覚できなくなっている人もいる。そんなときは、寝付きが悪いなどの不眠症状として現れることもある。
平日と休日の起床時刻の差が大きく、週末や休暇に普段より2時間を超えて長く眠る人は、かなり睡眠負債がたまっていると考えられる。

睡眠負債が大きくなると脳の働きが低下する。そのため、強い疲労感や倦怠(けんたい)感、無気力、意欲低下、不安、抑うつ気分、落ち着きのなさ、注意力散漫、協調性の欠如、攻撃性の高まりなどが見られる。

食欲不振や胃腸障害、筋肉痛が現れたり、風邪をひきやすくなったりする。睡眠負債が長い時間たまってくると、肥満や高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病、うつ病などの精神疾患にかかりやすくなる。最終的には、寿命が短くなってしまう可能性もある。

思春期前の子供の場合は、自分から眠気を訴えないことがある。そのような場合でも、不機嫌や注意力散漫、食欲不振など、眠気が原因と思われる行動異常が見られる。

児童生徒では、授業中の居眠りが増えて学業成績が下がり、けがや病気が増える。睡眠負債がたまると感情コントロールもしにくくなる。そのため、すぐにきれて興奮したり、逆に落ち込んでうつ状態になったりする。友人や教師との関係が悪くなることもある。