子供の眠りが危ない 睡眠負債を知ろう(3)「寝る子は育つ」は本当か

雨晴クリニック副医院長 睡眠専門医 坪田 聡

体が成長するのと同じように、大人と小さな子供では睡眠の内容も違っている。大人の睡眠は脳波の状態から、身体が休む「レム睡眠」と脳が休む「ノンレム睡眠」に分けられる。しかし、赤ちゃんは、まだ脳波がはっきりしないので、レム睡眠やノンレム睡眠の代わりに「動睡眠」と「静睡眠」に分けている。

動睡眠のときには、顔や手足の筋肉がピクピク動いたり、呼吸が不規則になったりする。文字通り、動きが見られる睡眠状態というわけだ。

動睡眠は体が休息する睡眠である。このとき、脳は活発に働いて神経ネットワークが発達する。新生児から乳児のころに全睡眠の半分を占めている動睡眠は、2歳頃になると大人と同じレム睡眠に変わり、時間も短くなっていく。

静睡眠のときには体や眼球は動かず、呼吸や脈拍もゆっくり規則的だ。脳が休息して、ぐっすり眠っている状態といえる。静睡眠は成長すると、ノンレム睡眠に変わっていく。

幼児期には、ノンレム睡眠の中でも深い睡眠が増え、熟睡量は一生のうちで最も多くなる。大人も子供も、寝ついてから3時間以内の深いノンレム睡眠中に、成長ホルモンが大量に分泌される。子供はこの「成長ホルモンのシャワー」を浴びることで、身体が急速に大きくなる。

思春期になると、睡眠中に性腺刺激ホルモンも分泌され始める。このホルモンによって性的な成熟が進む。外から見ればただ眠っているだけだが、体の中ではいろいろなことが起こっている。そのため、「寝る子は育つ」は正しいと言える。

最近では「眠らない子は太る」というのが、新常識となっている。富山県で1989年に生まれた約1万人を対象にした研究では、3歳の時に睡眠時間が9時間未満だった子供は、睡眠時間が10時間以上の子供と比べて、中学1年生のときの肥満率が1.6倍になることが分かった。

睡眠中は、成長ホルモンがたくさん分泌される。成長ホルモンは脂肪を分解するため、睡眠時間が短いと十分に脂肪が分解されない。

また、睡眠不足だと、夜に交感神経の活動が盛んになる。そのため、インスリンの働きが悪くなり、血糖値が上がりやすくなる。このようなメカニズムのため、眠らない子供は太りやすくなる。