筑波大学附属小学校教諭 青木 伸生
◆キーワードを数える
5年生の説明文に「生き物は円柱形」がある。この説明文には、11ある段落の中に「円柱形」という言葉が30回も登場する。筆者は、自分の言いたいことは繰り返し主張するので、何回も出てくる「円柱形」は、文章を読む上でのキーワードとなる。
子供たちは、まず「円柱形」が何回出てくるかを数える。数えるという活動は、クラス全員が取りあえず参加してできることの一つである。しかし、クラス全員が一度に30という数をぴったり言い当てるはずがない。そこにずれが生じる。ずれがはっきりすると確かめたくなるのが心情だ。子供たちは改めて文章全体を読み返して数え直す。
教師は、板書をしながら、段落ごとに円柱形の数を確かめる。ここでの板書のレイアウトが問題になる。授業が終わった後、文章全体の構成が目に見える形になるよう、最初から意図的にレイアウトするのがポイントである。
◆大事な段落を選ぶ
「円柱形」が30回出てくることを確認したら、「この文章の中で円柱形について一番大事なことを書いている段落はどれか」といった発問をする。
これは、段落の役割を捉えさせるための発問である。一番多く選ばれるのは、1段落と10段落である。
1段落の円柱形は、題名と同じように「生き物は円柱形だ」とわざわざカギ括弧に入れて示している。10段落は、円柱形の良さがまとめて書かれている。この他にも、問いの6段落などが選ばれる。
いろいろな段落が選ばれることで、それぞれの役割が確かめられる。
◆筆者の主張につながる発問
いろいろな段落の役割が見えてきたところで、改めて「『円柱形』が一度も出てこない11段落はなくてもいいね」と発問する。
実は、11段落が、1段落と合わせて筆者の主張が書かれている一番重要な段落である。筆者の主張は、「多様な中の共通性を見出すことの面白さ」であり、その一つの例が「生き物は円柱形」なのだ。
これまでの授業の中で、「円柱形」に着目させながら、最後に「円柱形」の書かれていない段落を考えさせ、筆者の主張に迫るという展開によって文章全体を効果的に捉えることができる。