進化する高校情報科 ―新学習指導要領の鍵を握る―(1)情報科は何を教えるのか

神奈川県立茅ヶ崎西浜高校教諭 鎌田 高徳

「なぜ先生の授業はWord、Excel、PowerPointの使い方をもっとしっかり教えないのですか」――。皆さんは、現在の高校で「情報」という教科が教えられているのをご存じだろうか。そう聞けば、さすがに「知っている」と答えるだろう。しかし、この情報科で「どんなこと」が教えられているか、説明できる人はほんの一握りではないだろうか。

私は、神奈川県の公立高校で情報科教諭として働き始めて、今年度で9年目になった。採用試験に合格し、胸躍らせて情報科の授業を始めたときのことを今でも覚えている。しかし、私が考えていた情報科で教えるべき内容と、周りの教員が情報科で教えてほしいことの隔たりに、当時はとてつもない衝撃を受けた。

それが、冒頭の発言に象徴されている、「Word、Excel、PowerPointのスキルを学ぶのが情報科」という認識だ。赴任した当初は、いろいろな先生に私の授業を見てもらう機会があり、授業終了後にはやはり、「なぜWordなどの使い方を教えないのですか」と言われた。

それから8年が経過し、私も中堅教師になったものの、教育現場における情報科の認識は、残念ながら冒頭の発言と変わらず、今も大多数の共通になったままである。では、本来、情報科で教える内容とは何なのか。生徒はどのような学びを、どんな教材や授業から深めていくのか。

授業開きの4月に私の教室で、1年生の第1回目の授業を行った。毎年、最初の授業では「情報科はどんなことを学ぶ授業だと思うか」と問いを投げ掛け、生徒たちに考えさせている。

生徒たちは配られた付箋紙に「タイピングをする授業」「コンピューターを使う授業」などと書き出してくれる。書き込みを眺めてみると、教員も生徒も、人は身近にあるモノから認識を持つのだと感じた。

教員は日常業務で、WordやExcelなどを使っており、生徒はコンピューター教室で授業を受けるため、目の前にある「身近」なコンピューターを見て、そうした考えを導き出すのではないか。私がこの「進化する高校情報科」を通して、まず皆さんにお伝えしたいことは、高校情報科が「Word、Excel、PowerPointの使い方を覚える教科」ではないということだ。

例えば、私の授業では、1980年代と2010年代の流行歌の歌詞を分析し、二つの時代の歌詞のデータから、時代背景を読み解く活動をしている。歌詞を分析する過程で「情報を発見する力」や「発見した情報を説明する力」を身に付けさせる狙いがある。

コンピューターやソフトウエアはあくまでもツールであり、場合によってはそれらを使わない活動もある。新学習指導要領では、情報科は必履修科目の「情報Ⅰ」と選択科目の「情報Ⅱ」に再編されるが、いずれも「Word、Excel、PowerPoint」ができるだけでは、到底十分とは言えない内容が盛り込まれている。

連載を通じて、情報科は「どんな事」を教える教科か、皆さんと一緒に考えていきたい。