進化する高校情報科 ―新学習指導要領の鍵を握る―(2)手段の目的化が問題

神奈川県立茅ヶ崎西浜高校教諭 鎌田 高徳

最初の単元では、スマホのピクトグラムを作って発表してもらいます――。高校1年生になったばかりの生徒が、情報の授業オリエンテーションを終えた直後の授業で、私はこのピクトグラムの制作から授業を始める。

生徒たちの反応はさまざまで「いきなり発表」「ピクトグラムって何」といった反応を見せる。ピクトグラムとは「絵文字」や「絵言葉」のことで、非常口やトイレの場所を示すものとして、身近に見かけることも多いだろう。この単元では、生徒たちに思い思いのオリジナルピクトグラムを制作してもらい、発表している。

前回、「情報科は『Word、Excel、PowerPointの使い方を覚える教科』ではない」ことと「情報科は『どんなこと』を教える教科か、連載を通してみなさんと一緒に考えていきたい」とお伝えした。

ちなみに、この授業の狙いは「生徒が自分の考えを相手に分かりやすく伝えられるようになる」ことである。この力を育成する過程で、コンピューターやPowerPointを活用する授業を実施している。

ここで強調しておきたいのは、コンピューターやソフトウエアはあくまでもツールであり、目的を達成する手段だということである。
情報科で「横行」している「Word、Excel、PowerPointの使い方を覚える授業」は、本来手段のはずのコンピューターやソフトウエアの操作の習得が目的になってしまっている。この「手段の目的化」が問題なのである。

授業でよくあるのは、完成見本を教師が提示し、書式設定や使用するフォント、関数など、その見本通りに作らせるケースだ。スキル習得のために、このようなトレーニングの全てを否定するつもりはないが、これだけで授業が終わってしまっては、情報科が目指す本来の力は身に付かない。

このスマホのピクトグラムを作って発表する授業は、題材の設定に強いこだわりを持っている。「生徒たちにとって最も身近なモノであるスマホ」を題材にして、生徒が教師と同じモノを制作するのではなく、生徒が表現したいモノを表現させるようにしたのである。

人と同じモノを制作しているだけでは、制作過程で試行錯誤する機会が著しく損なわれる。それでは、「自分の考えを相手に分かりやすく伝える力」が身に付くとは思えない。そのために、私は情報の授業で、生徒たちが表現したいモノを発見しやすくさせつつ、発見したモノを表現しやすくしようと、「身近な題材」を設定することに強いこだわりを持っている。

このピクトグラムの発表では、文字や図形、メディアの特性をしっかりと学んだ後に、PREP(プレップ)法と呼ばれる文章構成方法や引用のルールを取り入れてピクトグラムや発表資料の制作を行わせている。ただ、作品を作らせるだけではなく、情報科の学習内容を理解した上で授業を行うことが、この若い教科の「情報」の授業で最も重要だと感じている。

「情報科は生徒の身近な題材で授業を行う教科だな」と私は最近、授業をしながらつくづくそう思う。

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