世界の教室から 北欧の教育最前線(10)スウェーデン版チーム学校

学校生活を支える「生徒保健チーム」

日本では近年、いじめ、不登校、貧困などの子供の多様な課題に対して、教師が抱え込むのではなく、心理カウンセラーやソーシャルワーカーなど、さまざまな専門家が連携して対応する「チームとしての学校」の重要性が強調されている。

本連載第9回「敬称改革」では、スウェーデンの学校で協働の文化が育まれたことに触れたが、学習指導だけでなく、医療や心理の専門家との協働も発展し成果をあげてきた。「生徒保健チーム(Elevhalsoteam: EHT)」と呼ばれるこの協働は、各種専門家を集結させる点で日本の「チーム学校」の考え方と共通していて、その活動や課題、そして両者の違いから、興味深いことが見えてくる。


子供のヘルスケア

「生徒保健チーム」は、文字通り「生徒の健康(Elevhalsa)」のためのチームで、言い換えれば学校保健に携わる専門家チームだ。ただしこの「健康」は広い意味を持っていて、いじめや不登校など、日本では「生活指導」として扱われる問題も含んでいる。

学校保健は学習の土台となる、子供の心身のヘルスケア全般を意味していて、学校活動の一環に位置付けられる。その中心を担うために、学校長を中心に、学校医や学校看護師、スクールカウンセラー、相談員、特別支援教員、進路カウンセラーなどがチームを組む。なお、相談員(kurator)は子供だけでなく教師や保護者の相談も受ける専門職で、大学でソーシャルワークを学び、多くの場合、心理学も学んでいる。進路カウンセラーも大学に専門養成課程がある専門職である。

元来、学校保健は学校医や看護師による衛生面や身体の健康に関する維持管理を意味していた。1950-60年代になると、子供たちの心理的な問題が目立ち始め、心理カウンセラーや相談員が関わり、メンタルヘルスも扱うようになった。さらにその後、学習や進路に伴う不安などを扱う特別支援教員や進路カウンセラーが関わるようになった。学校保健の範囲が拡大するとともに、多様な専門性をもつスタッフが協働するチームが発展した。

協働を支えるカフェルーム
専門家の連携

ある学校では週に一度、生徒保健チームが集まって、問題のある生徒のケース会議を行っている。チームが対象とするのは、無断欠席が目立つなどの理由でクラス担任から報告された生徒である。報告を受けると、生徒保健チームの誰かが保護者や生徒と面談を行い、生徒の状況に応じて専門家がカウンセリングや学習支援などの対策を講じ、毎学期末にフォローアップの面談を行う。それでも問題が解決しない場合は、自治体のソーシャルサービスに協力を依頼する。

このように、教師個人が大きな責任を持つのではなく、必要な専門家がそれぞれの専門性を生かして対応するシステムが整えられている。

ただし生徒保健チームの専門家は、ほとんどの場合複数の学校を掛け持ちする非常勤だ。あるいは、地方自治体が必要な専門家を雇用して生徒保健チームを組織し、必要に応じて各学校の依頼を受ける。生徒とは距離があることが多く、生徒健康チームに依頼する前に教師が対応している事例が少なくないことも報告されている。

最近では、特にメンタルヘルスに関する問題を抱える子供が増えて、心理カウンセリングの待ち時間が長くなっている。多くの自治体や学校が適切な能力を持つ人材不足に悩んでいる。

こうした生徒保健チームの課題は、「チーム学校」がイメージする専門家の連携の限界や留意点でもある。一方、チーム学校と比べれば、生徒保健チームの特徴として、生徒の心身のヘルスケアという明確な目的と、段階的にシステム化された対応が目を引く。現実的な整備や活動を円滑に進める鍵でもあるだろう。

(本所恵=ほんじょ・めぐみ 金沢大学人間社会研究域准教授。専門は教育方法学)