世界の教室から「バリ」 エコとアントレプレナーシップ教育

■タイモブ教育研究会とは

タイモブ教育研究会は、アジア・アフリカ・南米を中心に世界35カ国・250件の海外インターンシップを扱うタイガーモブが、そのインターンシップ先・研修先で出合った教育トピックを紹介する場です。

教育というと欧米諸国が注目されますが、アジアやアフリカといった地域にも興味深い事例がたくさん存在します。また、海外でそうした取り組みをする日本人も居ます。

海外インターンシップという教育事業を通じて見えてきた、海外での事例や課題から、日本の教育を考え直すきっかけ作りをしていきます――。


■エコが教育スタイルにも影響

イスラム教徒が多くを占める大国インドネシアで、ヒンズー教が色濃く残る島・バリ島。観光地としても人気だが、「持続可能」で「オルタナティブ」なライフスタイルを求めて、移住者が世界中から集まる島でもある。

エコなライフスタイルは、教育スタイルにも影響している。現地の学校の中でも世界的な注目を集めているのが、2008年に開校したバリのグリーン・スクールだ。創設者でカナダ出身のジョン・ハーディーとシンシア夫妻は、バリでジュエリーブランドの事業で成功した後、2006年に映画「不都合な真実」を見たことをきっかけに、教育の力で未来を変えていくため、同校を開校した。当初は90人ほどだった学生も、教育環境や方針が共感を集め、現在は3歳から18歳まで30カ国以上の国から400人以上の学生が学んでいる。

■グリーンスクール
グリーンスクールの竹の校舎

グリーンスクールはノマドワーカーの聖地ともいわれる、バリ島ウブド地区のジャングルの中に位置している。その広大なキャンパスに入ってまず驚くのが、巨大で芸術的な竹の校舎だ。コンクリートの「箱」とは対照的なその校舎は有機的な曲線を描いており、中と外との境界線が曖昧なくらい気持ち良い風が吹き抜けている。

敷地にはきれいな川が流れ、田んぼや有機野菜畑、ヨガ教室、名物の泥のプールまであり、まるで自然公園のようだ。電力は、太陽光や小型水力発電を利用しており、家具や備品もアップサイクルされた「ゴミ」が使われている。グリーンスクールに集う子供はもちろん、大人、はたまたその辺を歩いている牛やニワトリまで、ここでは皆生き生きとしている。

ハード面のデザインだけでなく、コミュニティーのデザインも特徴的だ。地域コミュニティーへの還元という観点から、全校生徒の2割を現地バリから迎え入れている。通常の授業料はかなり高額だが、バリの生徒の授業料は全て奨学金で賄われている。また、同校の生徒でなくとも、周りのコミュニティーの住民が一定量のゴミを集めて持って行くと、英語の授業が「無料」で受けられるといった取り組みを実施している。

■アントレプレナーシップ教育

同校が環境に加え力を入れているのが、アントレプレナーシップ教育だ。小学生のうちから、自らのやりたいプロジェクトを企画し、学校の基金から投資を募り、実施までするといった実践的な教育が当たり前のように行われている。

例えば校内では、小学生が実施している養鶏プロジェクトや、養殖と水耕栽培を組み合わせたアクアポニックスを見ることができる。生徒たちは、始めるに当たって土地の利用や資金調達の交渉、設備のデザインのリサーチと作成、収支の計算や返済まで、大人顔負けの作業をこなす必要がある。こういった自分が興味のあるプロジェクトの実施を通して、自然と生物や数学、経済、社会といった分野を学んでいくのがグリーンスクール流だ。

興味のあるプロジェクトの実施を通して学ぶ

プロジェクトの中には、学校の枠を大きく越え、実社会にインパクトを与えているものもある。例えば「NALU」は、服が購入されるだけで、貧困層の家庭に制服が寄付される仕組みを作ったエシカル・アパレルブランドだ。立ち上げたのは、なんと当時8歳と11歳の小学生。きっかけは、制服が購入できないことで退学を余儀なくされた友人が居たことだという。

他にも、世界的に問題になっているプラスチックゴミの問題に取り組む「Bye Bye Plastic」も10代による活動で、TEDに取り上げられるほど注目を集めている。

弊社が主催する大学生や高校向けのリーダーシップ・プログラムでも、アフリカやアジアで、3日でビジネスを立ち上げるというワークショップを行っている。当初は、勝手のわからない途上国で、社会経験もない10代から20代前半の学生がどこまでできるのか、不安はあったが、結果は創造力も実行力も私の想像を優に超えていった。

私たち大人はどこかで、世界を変えるプロジェクトなんて作れない、と思ってはいないだろうか。テクノロジーの進歩と情報の民主化も相まって、今や年齢は障害にならず、できないことはほとんどない。私たちが先入観の枠を取り払い、適切なツールや手法という武器を与えれば、子供たちはそれぞれの興味のある分野で、目を輝かせながら驚くような能力を発揮してくれるだろう。

(菊池佳=きくち・けい、タイガーモブ㈱で、新興国でのリーダーシップ教育開発を担当)