世界の教室から 北欧の教育最前線(11)最優秀学校給食を目指せ!

最優秀グルメ校長などの発表も

本連載の第8回「増える学校の特別食」では、学校給食が「平等な社会の実現」という理念の下で提供されていることを紹介したが、本稿では、格差と評価について述べる。


給食の年間コストは3倍の差

給食の地域差としてメディアによく取り上げられるのは、一食あたりのコストだ。食糧庁(Livsmedelsverket)によると、給食1食当たりのコストは自治体間でおよそ94円(7.53SEK)から182円(14.62SEK)と、ほぼ倍の開きがあった。また、生徒1人当たりの年間コストは、自治体間でおよそ5万円(4千SEK)から14万円(1万1500SEK)まで、実に3倍の開きがあった(学校教育庁2017)。

食糧庁は「高い給食の質が良いとは限らない」とコメントしている。例えば有機野菜を使えば原材料費はかさむが、残飯の廃棄にはコストがかかるし、調理人が有能ならコストは安くなる。特別食の要望への対応もコストに関わる。給食に最も高いコストをかけているティーエルプ市でも、生徒が必ずしもその「高価な」給食を好きなわけではなく、しばしば近くのスーパーでパンやお菓子などを買って食べている、という残念な状況が地方紙に掲載されていた。

学校給食の評価ツール

自治体間の差は、地方分権化したスウェーデンの特徴である。地域差に対応し、質を担保するために、学校監査庁が成果に対する評価と統制を行っている。学校法で規定されている給食も学校監査の対象である。

学校給食の準備の様子(川地亜弥子氏撮影)

2011年に改訂された学校法で、無料であることに加えて「栄養が十分にある」学校給食を提供することが規定された。そして12年には、学校が自校の給食を評価できるウェブ上のツール「スウェーデンの学校給食(Skolmat Sverige)」が登場した。カロリンスカ医科大学の研究者が中心になって開発したツールで、食の栄養、安全、選択、持続可能性、教育的側面、組織とポリシーの六つの側面で包括的に評価できる。各側面についての質問に回答すると、自動的にリポートが作成されフィードバックされる。現在、41%の小学校がこのツールを活用しているという。

リポートは学校のウェブサイトに掲載したり、関係者間の協力を促したりするために活用することが想定されている。

「賞」をとって学校をアピール

公的な監査や評価以外にも、興味深い取り組みがある。学校給食に関する「賞」の存在である。その一つ、「ホワイト・ガイド・ジュニア(White Guide Junior)」は、毎年秋に最優秀学校レストラン、最優秀給食シェフ、最優秀調理人、最優秀グルメ校長などを発表している。ノミネートしたい学校レストランやシェフを推薦すると、ホワイト・ガイド・ジュニアのチームが学校を訪問し、味、栄養、食事環境、サービス、教育面など全体的な取り組みを評価するというものだ。

この賞は2013年に、北欧のレストランガイドである『White Guide』と、公的機関のグルメを扱った雑誌『Magazin Maltid』が共同で始めた。初年度は、全学校のおよそ5%に相当する250以上の給食現場に出向いたという。

「ホワイト・ガイド・ジュニア」の受賞は、毎年メディアにとりあげられる。常連校になっている学校もあり、例えば、ウプサラ市のナンナ基礎学校は、最優秀学校レストランに2年連続で選ばれた。この学校は、給食調理人が腕を競う「学校給食グルメ(SkolmatsGastro)」という大会でも優勝しており、給食で名を上げている学校ともいえる。

給食で学校選択をする保護者・生徒がどれほどいるのかは不明だが、少なくとも学校の名前をアピールすることにはつながっていそうだ。

スウェーデンの学校給食は、生徒や教職員の1日を彩り、健康面や栄養面で欠かせないだけでなく、スウェーデンの教育課題や挑戦についても教えてくれる事例といえよう。

(中田麗子=なかた・れいこ ウプサラ大学教育学部客員研究員。専門は比較教育学)

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