高校英語教育と大学入試(2)活動を通して英語を学ぶ


ココネ言語教育研究所所長、慶應義塾大学名誉教授 田中 茂範

新学習指導要領が2017年3月に公示された。22年から導入される新しい英語教育の指針を示したものである。14年の高大接続に関する中教審の答申では「真に使える英語力の育成」がスローガンに掲げられた。多文化が共生する状況の中で、個々人が主体性を持って文化的に多様な人々と協働しながら、自らの可能性を開くことを挙げている。より良い社会の実現に貢献するためには、国際共通語としての英語力が必要だという考え方も押さえている。

高校の英語では、現行の「コミュニケーション英語」が「英語コミュニケーション」に変更される。この変更の最大のポイントは、「コミュニケーションのための英語(English for communication)」の指導から「英語でのコミュニケーション(communication in English)」に強調点を移したところにある。加えて「英語コミュニケーション」の要点は、「活動の中で、活動を通して英語を学ぶ」という点にある。

この強調点のシフトによる波及効果は大きい。まず、英語教育の目標設定として行動目標が強調されていることだ。いわゆる、can-doリストを実現できるような英語指導である。

「5領域」という枠組みが示されたことも大きな注目点である。これまでspeaking、writing、reading、listeningは「4技能」と呼ばれてきたが、speakingをspoken productionとspoken interactionに細分化した。writing、reading、listeningを併せて言語活動の5領域としている。

「技能」といえば、その獲得が目的化されるが、「領域」と見なすことで、その中に含まれる活動に力点を置くことができる。speakingという「技能」ではなく、speakingという表現モードを使って何ができるかが学習目標になるということである。

こういった変化に伴い、生徒は、学習者(英語を学ぶ者)であると同時に表現者(英語を使う者)にならなければならない。英語が使えるようになるには、英語を使うしかない。まさにlearning by doing(なすことによって学ぶ)の実践が求められている。

これまでは、英語が使えるようになるために英語を学ぶという考え方が優勢であった。これは「コミュニケーション英語」のスタンスである。いつか、どこかで、誰かと英語を使うという目標に向けて英語を学ぶ学習者に徹してきたということである。このスタンスを持ち続ける限り、いつまでたっても英語は使えるようにならない。「英語コミュニケーション」のスタンスには、今、ここで、あなたと英語を使うという表現者としての生徒像が想定されている。

指導要領では「言語材料(単語や文法)」と「言語活動」という言葉が伝統的に使われている。この二つを分断するのではなく、融合すること。これがこれからの英語教育には求められる。学習から実践へ移行するという手順ではなく、活動を通して言語材料を学ぶということである。それに伴い、教員も語学教師としての役割に加え、場づくりを行うことができるプロデューサーとしての役割が求められるようになる。良いプロデューサーがいて、良い表現者が生まれるからである。

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