高校英語教育と大学入試(5)5領域の意味

ココネ言語教育研究所所長、慶應義塾大学名誉教授 田中 茂範

新学習指導要領の外国語編では、「5領域」という新しい概念が導入された。英語教育分野では「4技能5領域」だとか「4技能から5領域に」といった表現が使われている。この「5領域」の意味が十分に理解されていないからである。

まず、5領域はspoken production、spoken interaction、listening、writing、readingの五つを指す。これまでspeakingだったものが、spoken production、spoken interactionに細分化されると同時に、「技能」から「領域」という呼び方に変わっている。ここがポイントである。

ご存知のように、これまで4技能主義が常識的な見方であった。この「4技能」という表現は、1950~60年代に興隆したオーディオリンガリズムの名残である。listeningからspeakingに移行し、それにreadingとwritingが加わるという考え方が当初あり、近年では「4技能統合」という考えが優勢になってきている。

しかし、いわゆる4技能は「技能(skill)」か。よく考えると、スピーキングもリスニングも表現のモードにすぎない。人は何かをするために話すのであって、ただ話すために話すということはない。表現は言語モードと非言語モードの両方を使って行われる。言語モードは、産出モードと理解モードに分かれる。このように、「4技能」は「4つの表現モード」として再定義できる。

では、文科省がいう「5領域」とは何か。これは、言語活動の領域を表す言葉である。

readingという活動には、小説を読む、広告を読む、看板を読む、メールを読むなど、さまざまな言語活動が含まれる。同じことが、writingやlisteningについてもいえる。

では、speakingだけがspoken productionとspoken interactionになっているのはなぜか。実は、この切り分け方はCEFRに影響を受けている。CEFRでは、productionとinteractionとreceptionの三つを区別し、そこに口頭(spoken)と文章(written)を掛け合わせている。発信において一方向性か両方向性かの違いを重視していることがinteractionとproductionの区別に現れている。

CEFRの枠内では、spoken production、spoken interaction、spoken receptionの三つと、written production、written interaction、written receptionの三つを合わせると6領域となる。

それに対して文科省の5領域の考え方は、あえてspeaking領域を強調する形になっており、指導の力点は「口頭で英語が使える」ことにあることを暗に示しているといえる。spoken productionの典型はスピーチとプレゼンテーションであり、spoken interactionの典型は会話とディスカッションである。

これからの英語教育は、本来の意味での話す力―やりとりするspoken interactionの力と、まとまった内容について話すspoken productionの力―をどう養成するかが課題となる。この課題をこなすには、問題集中心の指導から、活動中心の指導にシフトしなければならないのはいうまでもない。会話では、瞬発力と即興性が求められるため、発問力や話題を調整する会話管理力などが指導の中心になる。まとまった内容について話すには、論理(話の筋道)が鍵となる。新学習指導要領では、「英語表現」「英語会話」に代わり「論理・表現」が設けられるが、これはまとまった内容について話したり書いたりする際の鍵となるだろう。