高校英語教育と大学入試(10)英語教師のミッション

ココネ言語教育研究所所長、慶應義塾大学名誉教授 田中 茂範

英語教師は外国語・外国語活動で育みたい資質・能力に関して、学習指導要領が示す「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」の観点をよく理解した上で、実践の中心に位置付けている。このことから教師の役割を考えると、「英語を説明し、訓練する」teacher/instructorとしてだけでなく、生徒の力を引き出すeducatorでなければならない。

同時に、生徒が英語力を高められるよう支援するfacilitator、教育・学習の場を効果的につくるproducerの役割も担う必要がある。それだけではない。クラスを管理するmanager、生徒の学習状況を把握し学習過程を評価するassessor、学習上の悩み相談に対処するcounsellorとしての役割も期待されている。

教科としての英語教育に特化すれば、英語教師のミッションは、生徒の英語力を育てる授業を行うことに尽きる。そのためには▽英語について簡潔に分かりやすく説明できる「説明力」▽生徒のやる気を引き出す「動機付けの喚起」▽言語活動のエクササイズをつくりだす「活動の場づくり」▽目的に合った効果的なテストを作成する「評価力」――が求められる。さらに言うなら、教室内の種々の問題に対処する「問題行動対処力」、学期・学年の目標を設定し達成するためのシラバスを開発する「授業設計力」も必要となる。

これらを満たす教師は、いわゆる「a good language teacher」の資質を備えていると言える。実際の授業運営に当たっては、指導技術や授業づくり、専門知識、そして英語力を磨いていかねばならない。例えば、日本語を媒介にして英語を理解しようとする姿勢についてどう考えるか。「仕方がない」と諦めている人もいるだろうが、日本語を媒介にする利点と欠点を見極めた上で、自らの考えを示す教師であってほしい。自らの考えを確立するには、第二言語習得研究の知見に触れなければならない。専門知識は確かな指導法のよりどころになり得るからだ。

個別具体的にはどういった音声指導を行うのか、文法項目をコミュニカティブに指導するにはどうすればよいか、基本語力を育てる有効なエクササイズは何か、教科書をコミュニカティブに使うにはどうすればよいか――さまざまなチャレンジがある。まさに、課題山積である。

そうした中で大切なのは、「最高でなくてもいい。昨日より今日の自分の方が少しだけ良い教師だ」という気持ちを持ち続けることである。東京外国語大学の若林俊輔名誉教授は「自分が教わったように教えるな」という名言を残した。名医は、絶えず最新の研究に注目し、患者のためにより良い方法を模索しながら、医療活動を行っているという。

われわれ英語教師も、生徒のために何が良いか考え、研究し、変化を恐れず指導を改めていかねばならない。自らの英語教師力を高める努力をし続けるということだ。教師力を高める総合支援サイト(PEN英語教師塾)も参考にしてみてほしい。

(おわり)