授業で実践 学びのファシリテーション(7)聞いていないふりをする

ファシリテーター 青木 将幸

「じゃんけんで勝ったのは誰ですか? 今、元気に手を上げてくれた人から順番に、お困りごと解決会議を始めていくよ」

まず、じゃんけんで勝った人のお困りごとに皆が耳を傾ける。お困りごとを聞いたら、どうすればそれが解決できるかを一緒に考え、知恵を出し合う。「私はこうしているよ」とアドバイスしたり、経験談を話したり、一緒に悩んだりしてもいい。

「1番手の人のお困りごとを解決する時間は5分! 短いけれど、集中すればきっとできるよ。よーい、スタート」と言って促す。すると一斉にクラス中で話し合いが開始された。

グループワークが展開されているとき、指導する側の皆さんはどのように過ごしているだろうか。かつて筆者は、それぞれのグループがどんな風に話し合えているかが気になって、グループの間をうろうろ歩き回っていたが、最近はそれをしなくなった。なるべく教室の隅の方で、マジックをそろえたり、黒板を消したり、体を動かして作業をする。いかにも「話を聞いている」ふうではなく、むしろ「今は皆さんが話し合う時間なので、おまかせしていますよ」という態度で関わるようにしている。

なぜなら、教員やファシリテーターがグループワーク中にサメのように回遊すると、学習者の発言や話し合いの進み方が微妙に変化することが分かったからだ。先生が見ているから、話を聞かれているからこんな風に答えないといけない、という意識にとらわれて、本音が出なかったり、本当に聞きたいことや言いたいことが言えていないシーンに何度も遭遇した。

以来、学習者とグループの力を信じて、なるべく「聞いていないふり」を心掛けている。「何か問題があったり、グループで話し合うのに支障があれば、いつでも呼んでね」という声掛けだけをして、あとは皆を信じて待つ。そのようにスタイルを変えてからは、グループワークの内容が、本質的により深まっているように感じる。

たかだか45分の付き合いだ。お互い初対面でもあるが、筆者は学習者である子供たちを全面的に信用する。「うまく話し合えていないんじゃないか」「的外れな話し合いになっていないか」と疑ってかからない。信じて、待つ。すると子供たちはその気持ちを受け取って「このおじさんは、私たちを信じてくれているんだ」と感じる。同時に、筆者のことも信じてくれる。ここでも「ブーメランの法則」は生きている。