問題行動が激減する MLAの理論と実践(1)誰もが行きたくなる学校づくり

MLA研究開発者会議

内閣府の調査では若年層の引きこもりが54万人を超え、この5年は不登校の子供も増加し続けている。これは過去から現在に至るまで、社会で通用する社会性やパーソナリティーを、学校教育で育てられずにいることを示している。

いま叫ばれている学力向上を達成しようにも、その前提がすでに壊れている。学校や教育委員会はさまざまな対策をとっているが、打開の道筋が見えずもがき苦しんでいる。

こうした中、人口7万人にも満たない岡山県総社市の実践が注目を集めている。同市の小学校は15校、中学校は4校。2009年当時、不登校出現率が長期にわたって全国平均を上回っており、問題解決の依頼を受けた筆者は同市教委と協議を重ね、10年からMLA(マルチレベルアプローチ)というプログラムを導入した。

以来、約9年が過ぎた。不登校出現率は17年に全国平均の3分の1程度まで減少(図)し、同警察署管内での中学生の検挙・補導数は205件から92%減の17件になった。学力も、多くの学年が全県トップ、あるいはそれに準じる成績を挙げ、学校生活満足感も毎年上昇という成果を出し続けている。

これから全16回に渡って、このMLAを紹介する。MLAとは、世界ではすでに標準となっている包括的生徒指導プログラムを、日本に合わせて修正したものである。

具体的には、①心理的・社会的・学業的・キャリア的発達を視野に収めた全人的成長プログラム②全ての児童生徒の成長を意識した多層的プログラム③全ての取り組みが有機的に統合されたプログラム④日本の教育事情に合わせた教員中心のプログラム――である。

基本プログラムは個人の成長に焦点を当てたSEL(Social and Emotional Learning:対人関係能力育成)とPBIS(Positive Behavioral Interventions and Supports:ポジティブな行動介入と支援)、集団の成長に焦点を当てた協同学習とピア・サポートの4つである。これを、異校種連携・欠席管理・チーム支援という3つのサポートシステムで支える。また、共感的理解・アセスメント・UDL(ユニバーサルデザイン)を重視することを全ての基盤とし、これら全体が学力とキャリア発達を支える構造になっている。

私たちはMLAの取り組みを「誰もが行きたくなる学級・学校づくり」と呼んでいる。子供が元気になり、先生が元気になり、地域や家庭から信頼される学校づくりである。総社市が実現してきたその道のりを、これからともに追体験していただきたい。

(広島大学大学院教育学研究科教授・AISES代表理事 栗原慎二)