問題行動が激減する MLAの理論と実践(2)対人関係能力を育てる

MLA研究開発者会議

これまでの生徒指導は、問題行動を起こした児童生徒に「ちゃんとしろ!」と厳しく接することで学校適応の改善を図ってきた経緯がある。しかし、現在はそのような指導だけで、児童生徒に学校適応を促すのは難しくなってきている。

その主な原因として、地域社会の教育力の低下に伴い、児童生徒が「ちゃんとした」行動、つまり社会に適応した正しい行動を身に付ける機会が少なくなった点が挙げられる。今後、生徒指導は「ちゃんとやること」を厳しく求める指導から、社会に適応した正しい行動のコツを教え、支える指導へと変わっていく必要がある。

MLAでは、基本プログラムの中にSEL(Social and Emotional Learning)が位置付けられている。SELとは、「社会性と情動の学習」と呼ばれる対人関係能力を育成する心理教育プログラムである。

社会に適応した正しい行動のコツを教えるだけではなく、自他の感情理解や自己の感情コントロールといった感情機能の育成も狙いとしている。社会に適応した正しい行動ができない背景として、感情機能の未熟さとの関連が指摘されているからである。

例えば、「空気が読めず」に状況に適した行動がとれない児童生徒は、他者の感情理解が苦手とされている。また、衝動的に攻撃してしまう「キレやすい」児童生徒は、自己の感情理解や感情コントロールが不得手といわれている。

対人関係能力を育てるSEL

感情の理解やコントロールは、行動実行までの3段階のうち、第1(入力)、第2(処理)段階に位置付けられる機能である。これらが十分に機能しなければ、第3(出力)段階の社会に適応した正しい行動はとれない。

こうした感情機能を含む対人関係能力の未熟さの問題は、全ての児童生徒に少なからず共通の課題となっている。

そこで岡山県総社市では、入力段階の「感情の理解」、処理段階の「感情のコントロール」、出力段階の「社会的スキル」(感情の表現を含む)と、「問題解決スキル」の4つの単元からSELを構成した。小学校から中学校までの学年ごとに年間計画を立案し、SELの実践を進めている。さらに5年前からは幼稚園でもSELを導入し、幼児から中学生まで、対人関係能力育成のための一貫した取り組みを行っている。

現在日本では、国内の教育事情に合わせて開発された「SEL-8S」と呼ばれるプログラムが導入されるなど、SEL実践が広がり始めている。

(島根県立大学人間文化学部准教授 山田洋平)