授業で実践 学びのファシリテーション(10)学びの場は「知りたい!」からつくる

ファシリテーター 青木 将幸

「どんなことでも、遠慮なくどうぞ」と言うと、若い男性の教員が手を挙げた。「ファシリテーションって、もうかるんですか? 青木さんの年収はいくらですか」。

「なんて失礼なやつだ」と、ベテランの教員がギロリとにらむ。それを手で制して「ご質問ありがとうございます。僕はだいたい、1本5万円ぐらいからお引き受けしていて、難しい案件だと10万円頂いたりします。学校はどこも予算がないので、そんなにくれませんが。年間100本ほどこういう仕事をしていますので、ざっとかけ算したぐらいの年収でしょうか」と答えた。若い教員は納得したのか、うんうんとうなずきながら頭の中で計算していた。

再度質問を促してみる。「ファシリテーションに資格制度はあるのでしょうか」と聞かれ、「ある特定のプログラムを行うファシリテーター認定は時々ありますが、一般的にはありませんね」と答えた。すると、「では、よいファシリテーターと、そうでないファシリテーターをどう見分けたらいいのですか」という質問に発展した。

ここでようやく、「ファシリテーションの本質とは何か」「定義は」「それをどう評価するのか」といった話ができるようになった。筆者は常々、学習者に何かを伝えるときには、学習者の質問が出そろってからレクチャーするようにしている。いわゆる「学習者・先手」というやり方だ。

多くの学びにおいては、まず指導者側がレクチャーし、それに対し学習者の質問があればする、という「指導者・先手」のスタイルをとる。しかし、これだと学習者が後手に回る。

たとえ失礼な質問であろうと、学習者が「知りたい!」と思うところから学びの場をつくるのだ。英国には「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」という古いことわざがあるそうだが、まさにその通りなのだ。学習者が「学びたい」「知りたい」という気持ちになってから話をすると、実にスムーズに入っていく。それまでは「ほぐして・待つ」作業を、学びの場で行うようにしている。

以上が、皆さんにお伝えできる「学びのファシリテーション」である。それぞれの教育現場で多少なりとも、ファシリテーションが役立つ機会があればうれしい。さらに詳しく知りたい方は、拙著『深い学びを促進する ファシリテーションを学校に』(ほんの森出版)を参照していただきたい。

(おわり)