新たな時代のキャリア教育(2)未来を一つの職業につなげる危うさ

認定NPO法人キーパーソン21代表理事 朝山 あつこ

「わくわくエンジン」が分かると、自分のエネルギーの行き先が見いだせるようになります。では、子どもがそれを見つけたとき、大人はどういった対応をすべきでしょうか。今回は具体的な例をお伝えしましょう。

川崎市の中学校で出会った生徒のエピソードです。わくわくエンジンを発見する実践プログラムを進める中、3人の生徒が「野球」にわくわくする、と言いました。いずれも、なかなかの強豪野球部で活躍しています。大人は彼らに「いいね。将来は野球選手になれば」などと勝手なことを言います。すぐ職業につなげようとするのです。

そう言われた彼らは「野球選手いいかも。なりたい。めっちゃいい!」と夢を描きます。懸命に野球に打ち込んでいる今の自分と、プロの選手として活躍している将来像が重なって、自身と社会もつながります。

しかし残念ながら、誰もが野球選手になれるわけではありません。彼らは中学、高校、大学時代を過ごすうち、どこかで「俺、野球選手になれないかも」と気付きます。野球に打ち込んでいる自分と、プロ選手として社会的に認知され、活躍しているはずの自分をつないでいた糸がぷつんと切れてしまうのです。そのとき、子どもはどうしてよいか分からず「どうせ俺なんて」「やる気ないし」「やりたいことなんてない」「別に」――と後ろ向きな言葉を口にしてしまいます。

私たち大人は、子どもの未来をたった一つの職業につないでしまうことに潜む大きな危険を認識しなくてはいけません。大人は自分の情報のひきだしから精いっぱい思い付く職業名を口にするわけですが、たとえ良かれと思って掛けた言葉であっても、その子の人生の可能性を狭めることにもなりかねないのです。

思い付きでその気にさせるのではなく、子どもの中にある本質的な意欲の源泉を引き出すのが大人の役割であり、大人の方こそそのような関わり方を学ぶ必要があると思うのです。では、どうすればよいのでしょうか。次回説明しましょう。