主体的・対話的で深い学びを実現するパフォーマンス評価(10)取り組みを始める人への留意点

京都大学大学院教育学研究科教授 西岡 加名恵

連載を終えるに当たり、これからパフォーマンス評価に取り組もうとする人に三つの留意点を届けたい。

第一に、評価の改善にはまず、教育目的と教育目標の明確化が必須だという点だ。パフォーマンス課題に適しているのは、知識やスキルを統合して得られる「原理や一般化」に関する理解である(図)。そのような理解は、長い時間をかけて徐々に深まっていくものだ。また、身に付けた理解をリアルな場面で使いこなし、探究を深めていく学習を組織してこそ、ポートフォリオを使う意義がある。パフォーマンス評価の導入は、学力観の転換と表裏一体のものとして構想されるべきだろう。

「知の構造」と評価方法・評価基準の対応(西岡加名恵著『教科と総合学習のカリキュラム設計』より抜粋、一部変更)

第二に、評価方法や評価基準はさまざまなものを組み合わせて用いる必要がある。「原理や一般化」の理解をみるにはパフォーマンス課題やルーブリックが必要だが、個々の知識(概念)やスキル(プロセス)の習得を確認するには、従来のテストとチェックリストが有効である(図)。学校現場ではルーブリックを作るという「手段」が「目的」にすり替わってしまう実態も散見されるが、それでは労力だけが増えて、的確な評価からかけ離れてしまいかねない。目標に応じたポートフォリオの設計は、教師と学習者が評価方法・評価基準の的確な組み合わせを共通理解する上でも有効である。

第三に、パフォーマンス評価に取り組む際は小さく始めて徐々に広げる方が良い。パフォーマンス課題に個人で取り組むのであれば、まずは1年に1個、試してみるのがよいだろう。学校として取り組む場合は、数人の教師に先行実施してもらい、徐々に取り組みを広げる形にすれば知見を共有しやすいだろう。ポートフォリオは単独の教科や領域で取り組むこともできれば、子供の学び全体に対応させて作ることもできる。ポートフォリオ導入の目的に応じて適切な形態を選ぶのが重要だ。

京都大学大学院教育学研究科E・FORUMでは、毎年、パフォーマンス評価に関する研修を提供するとともに、ウェブページでもさまざまな情報を発信している。関心を持たれた方は、そちらも参照してもらえると幸いである。(おわり)

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