発達障害を抱えた子の可能性を伸ばす指導(3)必要な指導・支援とは

明蓬館高等学校校長 日野 公三

現在、発達障害のある生徒を多く受け入れているのが通信制高校だ。中でも、教育特区で認可を受け2004年以降に誕生した通信制高校では、発達障害のある生徒の割合が全生徒の約15%を占めていることが分かっている(「新しい学校の会」12年10月調査)。同調査では、対象7校の全生徒中、不登校経験のある生徒が約60%に及び、発達障害のある生徒と重なるケースが少なくない点も明らかにしている。

これらの生徒はさまざまな理由から、義務教育段階で必要な学力や人間関係能力、適切な自尊感情を身に付けられずにいる。彼らが高校に進学した場合、心理面や生活リズム面の安定とともに、中学校までの復習と高校の学習との並行的な取り組みも必要になる。より良い進路実現も目指すのであれば、容易ならざるチャレンジになる。

通信制高校の教育対象は、勤労生徒から不登校経験者や発達障害者などへと大きく変化している。こうした現状の下、既存の公私立通信制高校の教育課程や仕組み、方法で必要な対応をとるのは難しいだろう。通信制高校の中には、課題を抱える生徒の状況を踏まえた指導や支援を実施しているところもある。

学習面においては、義務教育段階の基礎の「学び直し」を図り、それに併せたレポート課題や副教材の提供も進めている。障害特性・認知特性・学習特性に沿った個別指導計画を立案し、学習ガイダンスに始まるスモールステップでの教科指導も取り入れる。極端に苦手なことや教科がある生徒には一貫性・適時性のある指導や支援を行い、感覚過敏傾向にある生徒には、集団で行う授業より刺激が少ない個別指導の環境を調整する。また学習状況の確認とフィードバックのために、適切で柔軟な評価方法がとられている。

生活や心理面では、「日常的な生活リズムの安定により社会への適応を図る」という考えに基づき、心理的・身体的な負担度に留意した各種の指導・支援、生徒と保護者との面接を通じたニーズの収集とアセスメントが行われている。合わせて、相談員や支援員、スクールカウンセラーによる継続的な発達・心理支援、医師との連携による適切な指導、支援も実施している。保護者と緊密な関係を築き、個別の支援計画の作成は、彼らの同意と協力を得ながら進めている。

発達障害のある子供は、特に思春期に周囲の人々の適切な対応がないと、抱えている困難とは別の二次的な情緒や行動上の問題が出てしまうことがある。悩みや不安を他人に相談できず、抱え込んでしまうケースが多く見られる。それをそのままにしてしまうと、子供たちの自己評価の低下が続き、思春期以降の人生にまで悪影響が及ぶことがある。実際、職場という大人のコミュニティーでも、思春期に適切な対応を受けられなかったために苦しい思いをしている人がたくさんいる。うつ病などは代表的な例だが、一方的に早口でしゃべり続けたり、会話中にまばたきをしなかったりする人、こだわりが過度に強い人もいる。これらは本人の性格だけの問題ではなく、発達障害の影響をはらんでいる可能性がある。

発達障害のある思春期の子供にとって必要なのは、周りに適切な対応がとれる人がいることだ。相談しやすい環境づくりやサポートが大切になる。